銀魂

□コイゴコロ
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19時半。沖田さんの部屋を訪ねる。


「ドーゾ。入ってくだせェ」


そう返事が来、そろりと襖を開ける。
彼は肩肘ついてごろ寝していた。


「...なにそこで座ったままなんですか。中にどーぞ」

「えーと、中に?」

「別にとって食いやしやせんよ俺にも選ぶ権利があるんでねィ」

「なんと失礼な」


とは言われるものの、やはり土方さんからの注意は昨日の今日で、部屋の中へ足を進められない。



「っち、あのヤロー...わぁーったよ。」


そうしぶしぶと外に出てきたかと思えば、私に縁側に座るように促す沖田さん。

座った途端、彼は横になり、頭を私の太腿にのせて目を瞑った。


「ンー、ちょっと高いかな。」

「む...厚みがあるということですか。」

「柔くていいけど」

「力入れてやるー」

「あッやめてくだせェ硬くてイヤです」

「あはは...」


ふと涼しい風が吹いて、どこからか風鈴の音が聞こえてきた。


桃色、紫色、紺色。
夜が淡々と近づく空を、ぼうっと眺める。

空が濃紺色になったころ、お腹の虫が今にも騒ぎそうになっていた。そろそろ足も痺れてきそうだ。


「...沖田さん、」

「...」

「寝た?」

「ぐー...」

「ふふ。...このあいだ、誕生日だったんですってね。お祝いにー、これからどこかご飯食べにいこうよ」

「...んじゃサーロインステーキで」

「...お、おねいさんがんばります」

「マジでか」

「あ、でもお店空いてるかな、予約よやく...」


ケータイでお店を探していると、沖田さんはむくりと起き上がり、廊下に胡座をかいた。2人で画面を覗き込み、ああでもない、こうでもないとお店を厳選する。

結果、落ち着いた雰囲気の鉄板焼きのお店に決まった。徒歩圏内でちょうどいい。
席の確認電話を入れることにした。

ダイヤルをしていると、土方さんが通りがかった。



「お前らこんなトコで何やってんだ?」

「土方さんには関係ないことでさァ」

「あ?」


“あっもしもし席の確認を、”

お店に席の空きを聞く。良かった、空いてた。

“えっそんなことも、はい、ぜひ”



2人が言い合いしてる間にミニケーキをこっそり注文。

外野から怒声が聞こえる。こんな短時間でよくも喧嘩できるなあ。呆れたものだ。



「よし、沖田さん、予約はバッチリだよ」

「やりィ!んじゃ俺ちょっと着替えてきます、隊服だとアレなんで」

「はい。私、門のところで待ってますね」

「すぐ行きます」



沖田さんは、分かりづらいけどもうきうきと部屋に入って行った。
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