銀魂

□残業手当て
1ページ/5ページ

うげえ。


ガラと副長室の戸を引くと、相変わらず、むわっと煙草の匂い。それはもう慣れたのでいいとして、


「どうしたんですか、この書類の量」

「...暫く前にドンパチやった分をとっつぁんが送ってきやがった」

「あはは...自業自得といいますか、」

「ちゃんと浪士しょっぴいたんだ、こりゃ公務と胸張って言えるぞ」

「じゃあ残業手当期待してます」

「おう、現物支給だけどな」

「現物...? あの、冗談ですよ?」


"やるか。"と文机に向かう土方さん。おう、と軽く返事しちゃってるけれど、普段お世話になっている分、手当なんて頂けない。


「あの、土方さーん」

「ゆきは総悟の始末書を片付けてくれ。そんなに量はねえから、っつても20枚ぐれぇあるか...」

「ふふ、充分少ないですよ」


目の前の書類を少しでも減らすことが先決。ようし、と襷掛けをして、定位置の彼の左側に膝をつく。

"おい、それ..."ぼそっと隣から呆れた声がした。

久しぶりに綺麗に着付けたけれど、しっとりしているのなんて性に合わないんだもの。


「20枚じゃ物足りないんだから、どんどん回してくださいね」

「無理すんなよ」


ぽんと頭をはたき、労いの言葉。

やっぱり今日は少し優しい。

恥ずかしくて、なにようと睨んでみようと振り向くと、細められた目と目が合った。

自分でも聞き慣れない布ずれの音を立てながら、そそくさと彼の右側に座る。


「ゆき、そっちでいいのか」

「なんだか今は、いつもの位置だとダメなんです、右利きだから。」


右利きだから、字が震えて困るから。


「ふーん?」


どうしよう、左肩がくすぐったいなあ。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ