ナルト

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「煮物は今日だって決めてたの。冬至でしょ」



本当はゲンマにきてほしくてカボチャ料理をを出したなんて、最重要機密情報。
そしてかぼちゃなら何でも好きなのだと思っていたことも。

夜の一品メニューたちの中から、ゲンマは先ずかぼちゃの煮物を注文して、頬張っている。



「毎日、煮物でもいーよ…ゆき、元気にしてたか」

「うん、風邪も引かず、元気です」

「まあ馬鹿は風邪ひかないっていうよな」



あ、また馬鹿って言った。あの夜も言われたの覚えてるんだからね。
ゲンマもピンピンしてるって、アオバさんから聞いていたと意地悪に返した。

すると、気まずそうに千本がチラリと揺れた。



「…アイツとはどーなんだよ」

「アイツ?」

「言わせるなよ、わかるだろ、」

「…言わせないでよ」



最近来ていないし、避けられている気がするなんて、どうしてゲンマに言えよう。

打ち明けたとして、何故かなんて問われたら、悲しくってそんなの私が聞きたい!
…だなんて喧嘩になってしまいそうだもの。



「あ、そ…あ、熱燗頼むわ」

「はい、そう思ってたの。あとこれも」

「湯豆腐。いいな」

「柚子胡椒でどうぞ。柚子を農家さんがたくさんおまけしてくれたの」



見て、とレジの棚を指差す。そこには竹ざるに柚子をてんこ盛り。絞っても、皮をすりおろしてもまだまだ余るぐらいあったから、お会計の後にお客さんに欲しい分だけのお土産にした。

柚子湯にとゲンマにも渡そうとしたら、やんわりと断られた。



「俺いつもシャワーだし。これから帰って沸かすのも面倒、」

「そっか。それじゃあ、うちで入って行く?いい匂いだよ、昨日もフライングでお湯に浮かべたの」

「お前なあ、家で風呂入ってけってそういうことだぞ?いや、そーいう事なのか?客、俺だけだもんな?」

「あ!そうだ、銭湯も柚子湯だって!」

「ったく…あ、それいいな。」



ゲンマは、そうしようと言って徳利を傾けた。

もう空になっていて、ぽた、と一滴だけ落ちる。



「いや、やっぱやめる」

「やめるの」

「ゆき、温泉行きたかったんだろ」

「そう、美肌の湯。シズネさん絶賛。だけど場所が分かんないの、知ってる?」

「じゃあ、日曜に行くか」

「もう、男女で温泉行くって、そういうことなのよ」

「ああ、デートしようぜ」

「でっ」



はは、とゲンマがいたずらに笑う。

料理の評判もいいみたいだと、私の手にお代を握らせる。



「んじゃ、考えとけよ」

「もうごはんいいの」

「ゆきの顔見れたんで充分」


再来週な、と付け加えて、
ゲンマは柚子を片手に店を出て行った。



「どうするのよ、その柚子…」



デートなんていうから、行けないよ。



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