ナルト
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「ふふ、さっそく招き猫の効果だ」
満足そうに歩いていく猫を見送ってすぐ、ある常連さんがやってきた。
「招き猫?アレ、オレ今日一番客?」
「いらっしゃい、アオバさん。今日の一番乗りは猫だったの」
「ああ…それで招き猫ね。あ、定食頼むよ」
「かしこまりました。」
やかんで沸かしたお茶を湯呑みに注ぐ。熱いから気をつけるようにと添えて渡せば、アオバさんは冷めるのを待ちながら湯呑みで手を温めた。
寒鰤の塩焼きを角皿に、人参の胡麻和えを小鉢に盛る。ほうれん草を別の小鉢に、上からおろしたてのとろろと出汁をかけた。ご飯とお味噌汁もお盆にのせて、手渡した。
「このほうれん草の美味いなあ」
そしてとろろ多めで、と小鉢をおかわりしてくれた。ふふ、やっぱりアオバさんはとろろずき。
「ほうれん草は今頃が旬なの。鉄分とるのにもいいでしょ、だからたくさん買ってきたんです。もう少ししたら、春菊に変わるかなあ」
「そーなのか。春菊というと鍋かすきやき食べたくなるな」
とろろすき焼きっていうのも美味しいとつけたせば、それは楽しみだと笑った。
「ご馳走様…はー、店から出るのが億劫だよ」
今度はお会計をしながら話をする。
「雪が積もるのももうすぐなのかなあ…ねえ、アオバさん、みんな、元気にしてますか?」
「まあ風邪っぴきはいないかな…ゲンマ兄もピンピンしてるよ」
「そう、」
ゆきちゃんも風邪に気をつけて、とアオバさんは仕事へ向かった。
なあんだ、元気にしてるのね。
心配ご無用かな。
その夕方、アオバさんが店を覗きにきた。
「よお、ゆきちゃん、風邪ひいてないか?」
「ふふ、今日の今日で、元気ですよ」
「あのな、魔除けがあるらしいぞ」
そう一言残して、笑って帰ってしまった。
なんのことだろう。招き猫ならいたはずよ。
節分には鰯の頭を魔除けにいうけれど…まだ早い。私は眉を顰めて店先を覗く。
そこには、今朝の猫にあげたいりこの頭が落ちていた。
「ふふ、まさかこれのこと?」
とびきり臆病な鬼もいるのね