ナルト

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なんだかんだで読んでしまった、イチャイチャタクティクス。

ちゃんと読むとなかなか…その、刺激的だった。
先輩はよくあんなものを人前で堂々と読めたもんだよ。といいつつも、情けなくも僕も男だ。
読み終えた後も悶々として、あっというまに朝だった。

…”椅子がギシギシと…”

“無理そんなの”

追いかけてくるようにつぎつぎとフレーズが頭をよぎる。振り切るように、まだ薄暗い道を早足で道を急いだ。



「あっ、ヤマトさん…」

「いや、それはだめだ!さすがに!」



ついにゆきさんの声が、




「ヤマトさんっ!」

「はいいいい!」



ゆきさんは、ぱちくりと目を開けて、驚かせてごめんなさい、と苦笑いをした。



「ふふ、おはようございます。久しぶりに元気そうな声が聞けた」

「いやあ、元気というか驚いたというか。本物の声でよかった」



寝不足な上に考え事はよくないなあ。
身体が勝手に、通い慣れた道に向かってしまったらしい。

どうぞ、と言う愛おしい笑顔には逆らえない。
久しぶりの店での朝食になった。

温かいお茶を飲みながら軽く会話をする。



「それで…ふ、ぁあ」

「寝不足?」

「ああ、失礼。少しね。」

「もしかして私、夢に化けて出ちゃった?さっき本物、と言ってたので」

「はは、化けてても嬉しいよ。…本を読み耽ってしまって」

「ふふ、いい本があったんですね」

「まあ…」



小気味良い音で朝食の準備を始めたゆきさん。

その後ろ姿のある景色をぼうっと眺める。
ふんふん、と小さく声が聞こえた。

はは、ゆきさん鼻歌歌いながらも作るのか。

台所の窓は東に面して、少しずつ明るくなってきた。柔らかそうな頬へ、さらに血色を載せるように朝日が照らす。



「おまちどうさま。」

「ありがとう、いただきます…ナルトから聞いたよ。お祖父さんの手伝いだったんだってね」

「そうなんです、久しぶりに家族に会って…」



ゆきさんはぽつりぽつりと家族の話をしてくれた。

ああ、そうか。
いつも陽だまりのような彼女。
温かい家族に愛されて育ってきたんだ。


文字通り、日陰者でやってきた僕。

もしも僕が大切な人になれたとしても、釣り合わないんじゃないか。がっかりさせてしまうんじゃ無いか。里を離れている間、誰がゆきさんを守れるのか。

アスマ先輩と話したデートに誘えるわけもなく、朝食を食べ終えて出勤の時間。



「ありがとうございました。…あの、ヤマトさん。また、一緒にゆっくり本読みたいです」

「ああ。だけど…しばらく仕事が立て込んでるんだ。化けてなくていいから、夢に出てきてくれるかい」

「はい。ふふ、」



いってらっしゃい、を背に受ける。



「ホントに夢の話だな…」


暖簾を捲って店を出た。

僕には眩しすぎる朝日だった。



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