ナルト
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「え、いーのそれで」
“今日は一楽に行こう”
予想外の発言に、俺とヤマトの腕を引く手がピタッ止まる。ナルトがほろりに行こうと誘ったところだった。
「どーしたのヤマト、いつもなら…」
「ヤ!ヤマト隊長もやーっとコユいラーメンの魅力に気づいたか〜!」
「そういうことです!カカシ先輩も行きますよね!」
「行こ行こ!俺ってば大盛りにしちゃお〜!」
怪しいな…ま、ラーメンも久しぶりだしな。
豚骨味噌チャーシュー大盛りが3つ出される。
俺とナルトが食べ終わる頃、言い出しっぺのヤマトの丼はまだ並々とラーメンが入っていた。
「隊長、食欲ないのか?大食い選手権の時はあんなに食ってたのに。早く食べないと伸びちゃうってばよ」
「ああ、アニメのおまけコーナーの」
「ちょっと先輩、そのメタ発言は勘弁してくださいよ」
「あの時のヒナタもスゴかったなー」
遅れてヤマトが食べ終わる。
前屈みに屋台の暖簾をくぐって、その後も1人だけ前屈みで胃の辺りを抑えている。コユいの苦手なら無理しなきゃいいのに。
ナルトを見送った後に、チクリと刺してみた。
「焼肉行ったり慣れない食生活するからだろ。やっぱりゆきのとこのがよかったんじゃないの」
「それは先輩でしょ」
「まーね。俺が行くと茄子の味噌汁作ってくれるからな」
「わざわざ?先輩も遠慮したらどうなんです」
「アレ?妬かないのテンゾウ。ヨユーだな」
「ヤマトです。そうやって遠回しに探りを入れるのは悪い癖ですよ、ホント」
喧嘩でもしたのかとズバリ聞いてみる。
そんなにあからさまにあの店を避けたりして。
ゲンマに静かに啖呵切られたってとこだった。浮かれていた自分が情けなくなったと。
「…向き合う自信も実力もないんですよ」
「ああ、そーゆーことね」
「なんですかソレ、自分から聞いといて余りにも冷たすぎやしませんか」
アハハ…笑って濁す。酒飲みながらじゃなくてよかったかもな。おそらく長くなる。最悪、夜が明けそうだな。
「ま部下に気を遣わせすぎるなよ。さっきのナルトもそうだ…って、勝手にあいつらがお節介始めたんだったな」
「はは、可愛い部下に恵まれましたよ」
「んじゃ先輩からもお節介」
ぽん、とヤマトの胸に1冊の本を当てる。
「先輩、コレ…」
「恋愛の秘伝書、イチャイチャタクティクス」
「…僕ぁ物凄く残念な気分ですよ」
おいおい、先輩を睨むんじゃあないよ。
そこはさあ、
「アレ?ダメだった?」
優しい先輩に恵まれた、でしょ