ナルト
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「ねーちゃん!おっかえりぃー!」
来たってばよー!
ヤマト隊長から聞いて、閉店間際に駆け込んだ。
いらっしゃい、と迎え入れてくれるニコニコの顔。なんだか照れ臭くて、声が小さくなる。
「へへへ、久しぶりだからかなー、なんか照れるってばよ…あ!俺もう今日はラーメン食べちゃっててさ」
「ふふ、会いに来てくれてありがとう。嬉しい」
だから、照れるってばよ…
可愛いうえにこんな風に言われたら、そりゃー、みんな好きになっちゃうよなー。
「…でも、デザートはまだでしょ?」
「うん!」
それから、お土産に買ったというお饅頭を食べながら話をした。
よーするに、ぎっくり腰になったじーちゃんの代わりに、火の国の大名のご飯を作ってたって話だ。
高級な肉を調理するときは緊張で震えたって、本当かなァ、ふふって笑い飛ばしてそうだ。
「で、帰ってきたってことは、じーちゃんの腰が良くなったんだな!」
「うん。だけど腰痛って繰り返しやすいみたいなの。たまには家業も手伝わなきゃね」
…カギョーってなんだ?
それより、ねーちゃんの声が少し暗くなったのが気になる。
「…家族のところに戻らないかって話もしたの」
「それってば、店閉めちゃうってことか?そうなると木の葉の里から出てくんだよな?」
「今はそのつもりは無いよ。私の出身…故郷はここだし、」
“今は”って?
その理由を聞いた。
「今はまだ、自分の好きなこと…思うように料理をしたいの。旬の美味しいものを、できるだけたくさんの人に食べてもらって、元気付けたい」
「ヘェ…」
「それに木の葉の里には大事な…」
そう言いかけたところで、戸の向こうに人影が見えた。ねーちゃんは慌てて店の外に声をかけに行く。
大事な…ものかな。思い出かな。俺は大事な人がたくさんができたなぁ。
…ねーちゃんの大事な人かあ、うしし、聞いてみちゃおっかな。
「ごめんなさい、今日はもう閉店のじか…ん」
外にいるねーちゃんの声を遮るように、
ザッ、と砂を擦るような音がした。
「どうしたってばよ!?」
慌てて駆けつけた。そこには、前にも見たような光景。そうだ、ねーちゃんを最後に見た日と同じ…
…じゃ無い。あの日ねーちゃんを抱きすくめたのは余裕の顔だった。
だけど今日のは、鼻を赤くして、苦しそうだ。
「ごめんね、また心配かけちゃった」
「…ちゃんと言えってんだよ」
「貼り紙、」
「あんな一言じゃ足りねえよ、馬鹿野郎」
ごめん、ごめん、とねーちゃんは見上げながらゲンマさんの頬に手を添える。そしてその目元を拭った。
「泣いてねぇよ、」
「あ、やだ、髪ぐしゃぐしゃになっちゃう」
「…ん、なんだ、ナルトが来てたのか」
「うん、お土産食べながらおしゃべりしてたの」
話してたところ悪かったな、とゲンマさんは帰っていった。
俺たちは部屋に戻って、おかわりの温かいお茶を入れてもらった。
「ごちそーさま!身体あったまったし、帰るってばよ」
「うん、また来てね」
「おう!次は腹空かせてくるってばよ」
夜遅いから気をつけて。ねーちゃんはそう言って俺が見えなくなるまで見送ってくれた。俺も、何度も振り返って手を振った。
結局、話の続きは聞けなかった。
ねーちゃんの大事な人、1番最初に出てくる名前が、俺の思っている人じゃなかったら。
家に着いて、ベッドに横になる。
「どうしたらいいか分かんねーってばよ…」
シカマルが言ってたなァ
大人の恋愛は犬も食わねーんだっけ。