ナルト

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「はは、情けないなあ…」



早朝の道を歩きながら、先日の出来事を思い出す。



報告の後、人気のないところでゲンマさんからの宣戦布告があった。



『ゆきにおむすびを作らないよういったんだけどな、』

『…何故だめなんです』

『食べといて気が付かなかったのか』



つーか話遮るなよな、とまた千本が揺れた。
そうしてゆきさんのおむすびの秘密を聞かされた。それは本当に秘密にしなければならないことだった。



『あいつ、ヤマトだけにならおむすび握っても良いだろうと言ってんだ』

『…』

『癪だけどな。だがな、お前にゆきの幸せを守れるのかよ』



浮かれて任務で力出しすぎる様なマネはしない、べらべら他人に喋ることはしない、そう言う事だろう。

僕は自分が嬉しいばかりで情けなかった。



『そこんとこ、俺は負けるつもりはねえよ』



そしてただ去っていく恋敵の背を見送った。




今日も暖簾はかからない。

ここ数日は、仕事の行き帰りに店の様子を確認している。たったそれだけ。

きっとゲンマさんなら、心配でたまらなくて、毎日できる限り、彼女の気配や情報を探し回るんだろう。


朝の空気に溶け込んで、しん、としている店。
それに安堵している。
ゆきさんに合わせる顔がないんだ。あの時の自分が恨めしい。



「何で何も言わなかったんだ僕ァ…」



本当は、これぐらい言い返せばよかったんだ。


臨むところだ、と。



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