ナルト

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「おまちどうさま」



昼の定食を机に置く。今日は鮭の幽庵焼きにさつまいもの甘露煮、小松菜と豚肉の塩炒め、きのこのお吸い物。

昼下がりの落ち着いた時間。店内には、2.3名のお客さんがゆっくりと過ごしてくれている。

そろそろ暖簾を下ろさないとなあ。
西から差し込む陽光は、少し黄みがかって眠気を誘う。休憩時間はお昼寝しちゃいたい。

ぼんやりとガラス越しになびく暖簾を見れば、人影が現れてきゅっと眠気が引っ込んだ。



「いらっしゃいませ」

「よう、まだいいか?」

「ゲンマ。うん、どうぞ」

「悪いな。こんなギリギリに」



大丈夫、と言ってカウンター越しに温かいお茶を出す。
ゲンマは湯呑みで手を温めた。



「さんきゅ、今日は冷えるな」

「そうね。朝、霜が降りてたからびっくりしちゃった。...お会計ですね、ありがとうございます」



先にいたお客さんたちは立て続けでお会計を済ませていった。お見送りのついでに、暖簾と立て看板をしまう。

店内にはゲンマだけ。なんだか見慣れた景色で、ひっこんだはずの眠気が戻って来ちゃいそう。



「今日は珍しく遅いのね。忙しかったの」

「ん、まあ、色々な」

「そう、無理はしないでね。定食でいい?それか、丼ものもあるよ、お肉たくさんのっけて」

「いや、今日は食べてきたんだ」



え、それじゃあお昼寝でもしにきたの。
そう言えば、寝たいのはゆきのほうだろうと笑われる。



「ふふ、ばれちゃった」

「疲れてるのか?」

「ううん、日差しが心地よくてね、」

「ならいいんだけどよ」



いつもと調子が違う。どうしたんだろう。ねえゲンマ、何かあったの。そう問いかけた。



「俺は何もない...いや、ある大アリだ。ヤマトと、じゃない。本題はおむすびの件だな」

「ヤマトさん?おむすび?」



歯切れの悪い話口調が気になって、ゲンマの横に腰掛けた。



「弁当に持っていって食べたんだろ」

「そうだよ、知ってたの。ピクニックデートにお弁当っていったら、おむすびは定番でしょ」

「デート」

「えっ、あ、お出かけの間違いです、お出かけ」



顔がカアっと熱くなる。付き合ってもいないのに、デートだなんて自惚れちゃいけない。



「お出かけもデートも俺にとっちゃ同じだ。とにかく、おむすび。もう握るんじゃねえ」

「ど、どうして」

「どうしてもこうしても、お前に何かあったら困るんだよ」



頬を押さえている手をゲンマががしと掴んだ。蛇が蛙を睨むような視線に、強い口調。思わず体が強張る。



「わ、分かんないよ。もっと詳しく教えて」

「...あぁ」



おむすびは特別思い入れがあるんだったな、と困ったように笑った。手の力を緩め、それでも私の手は掴んだまま、ゆっくりと下される。

それから、淡々と話をしてくれた。

私の手のひらのこと、チャクラのこと、ヤマトさんの術のこと。悪用のリスク。



「私、そんなこと気が付かなかったよ。自分で食べても分からないもん。お腹いっぱい、元気出たなあ、と思うくらいで」

「そーか」

「リスクはあるけど...私の作った料理でホントに力が湧くなんて、願ってもないことだよ。それにね、」



木遁と相性がいいんでしょう、そんなこと知っちゃったらね。

しかめっつらのゲンマに許しを乞うように問いかけた。



彼にだけ、作るのはいいでしょ?



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