ナルト
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「ゆきさん、トランプ強かったですね」
手品の指南書が目に入り、隣にいる彼女へ声をかける。
「リベンジしますか?ゲーム必勝法の本がありますよ」
「もーそれはいいです。僕は建築関係の新刊を...」
「いいですね。私は、んー、小説にしようかなあ」
今日は日曜。書店にて。
やっと誘えた2人でのお出掛け。
あの夜、どこかでのんびりしないか、と精一杯振り絞った言葉には、ぜひと柔かに返事をもらった。
そうして、公園でゆっくり本を読みたいとの提案を受け2人並んで本を選んでいる。
ゆきさんの立つ側の半身が、そわそわとむず痒くてたまらない。
はあ、僕は一体幾つなんだか。
「ん」
脇腹のあたりにごつんと何かが当たった。
見ると、ゆきさんの持つ大きな籠。
「あ、ごめんなさい」
「はは、ツッコミでも入れられたのかと思ったよ。痛くはないよ。...ところでいい本はありました?」
「つっこみ?....あ、これなんてどうかな。推してありますよ、カカシさんもいつも読んでるシリーズ」
「あ、それは」
ゆきさんは本を手に取りパラパラとめくる。言わずもがな、イチャイチャパラダイスだ。ナルト曰くエロ小説、
「うーん、お天道様の下で読むにはなあ」
そして何事もなかったように本を棚へ戻す。
意外にもあっさりした反応だった。
ゆきさんが頬を染めて恥じらうのを想像してて、なんだか自分に呆れる。
「ヤマトさん、この小説の内容知ってたのね」
「あ、いや、それはですね」
「なーんてね、ふふ」
ゆきさんって思いの外、悪戯好きだなあ。兄貴分とはいえゲンマさんにだけフランクだったのが、最近ぼくにも向けられる。それは喜んでもいい、はず。
そんなやりとりをしながら本を選び、
各々、会計を済ませて通りを歩く。
少し冷たくなってきた風にのって、甘い匂いがやってきた。
「あ、ゆきさんお腹空きませんか。たしか、サクラがあそこの点心が美味しいと」
「お腹はすいてるけど...それじゃあ、そこは次回ということに」
「次でいいのかい?」
ゆきさんは頷くと、少し照れ臭そうに手持ちの籠を上にあげた。
「外でゆっくりデートするならお弁当が食べたいなと思ったの」
「ゆきさん」
女性は荷物が多いなあと思っていたが、そういうことだったのか。
次回の予定がいつのまにかできたこと。
彼女からのデートという言葉。
慌てて口元に手をあてがう。
「そんな事しないでくださいよ...」
顔の緩みが止まらないじゃないか。