ナルト
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「お湯加減どう?熱くない?」
乾燥機のものを取り出しながら、風呂場の青年に声をかける。すると、”気持ち〜、お湯もいい匂い、天国...”と返ってきた。
ふふ、いつも弾けるような声なのに、今は蕩けてふにゃふにゃになってる。
疲れた身体もふにゃりと解れるといい、そう思いながら2階の自室へと上がる。
自室に戻るのには外玄関と脱衣所横の階段があるけれど、こちらはもうあまり使わなくなってしまった。
それというのも、
「ヤマトさん、この梯子とっても便利です」
厨房から自室、屋根上まで一直線の梯子があるから。いつかヤマトさんがやらかしちゃって、それを改修してもらったもの。
ほんの少しだけど、ショートカットが出来、遊び心をくすぐられるからついつい梯子を使ってしまうのだ。
梯子のかかる穴から顔を出して声をかければ、少し驚いた様子のヤマトさん。
「うわ、あ、いや、ははは。怪我の功名と言うんですかね、こういうの」
「ふふ、術が屋根を突き抜けたときには、私も怖い顔しちゃいましたね」
「ああ、あの時は...封印術の印を結んじゃいましたよ」
そう言って苦笑いするヤマトさん。そこまで怖かったなんて。思わず私も苦笑い。
そのうち彼は手元の本に目を戻し、何やら呟いていた。
「にしても僕が作ったとはいえ、床から顔だけ出てくるのはびっくりするな。螺旋階段の方がよかったか...」
「...それ、何の本ですか?」
「木造建築についてです。好きなんです、この手の本」
隣に腰掛けて問いかけると、内容見せながら答えてくれた。
うわあ、線と数字ばっかり...
拒絶反応、思わず本を睨みつけてしまった。
「はは、僕が料理の本を読むときと同じ感覚かな。図面が沢山書いてあって僕にとっては実用的ですよ。あ、これなんてどうです?面白い作りで」
高い塔のような建築。真ん中に太く長い柱があるが、横に渡した支えとはくっつかず、独立して立っている。
図面を見ながらしばらく考えを巡らせていると、ヤマトさんがその1、と切り出した。
「設計ミス。その2、火事でも大黒柱が燃えないから。その3、地震の揺れに強いから」
「ふふ、クイズ? じゃあ、2番」
「どうして?」
「1はないでしょ、それに地震が来たらパタンと倒れてしまいそうです」
その答えに対して、少し得意そうに、ブー、と効果音。似付かなくて、可笑しくなって笑ってしまう。
「ヤマトさんたら、ふふ」
「慣れない事はするもんじゃないなぁ」
「不意打ちでした。すみません、笑っちゃって」
一呼吸おいて、答えと解説を続けてくれた。
答えは3で、上手く撓って地震の揺れに強くなるのだとか。
「...続き、覗いて読んでていいですか?」
「もちろん」
意外な解答に興味をそそられて、
彼のペースに合わせて、私も本に目を通していった。