ナルト
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「ご馳走様でした」
合掌を解き、畳に後ろ手をつく。
あぁ、美味かった。
目の前には、空になった白い土鍋。
座敷で3人で鍋を囲み、談笑しながらの夕飯だった。
ネギたっぷりの鶏鍋に、〆は優しい卵雑炊。蓮根の入った鶏団子は絶品で、いつになく食べ過ぎてしまった。
鼻からゆっくり息を吸い、お腹に空気を送る。満腹の腹の皮を少しでも伸ばして、楽にしようと試みた。
「ふふ、お腹ぱんぱん?」
「隊長、珍しくがっついてたもんな」
「そうそう、ヤマトさんって本当は大食いだったのね。びっくりしちゃいました」
ナルトほどじゃないと笑って見せれば、だって美味いもんはしょうがない、とナルトが口を尖らせる。一方その目は今にも蕩け閉じてしまいそうだった。
「寝たら牛になっちゃうよ」
「無理、寝みぃ、食欲の次は眠気が」
「んもー、しょうがないなあ。沸かしてくるから、もうウチでお風呂入っちゃって」
はは、ゆきさんが牛になったみたいじゃないか。なんて言ったら今度は鬼になりそうだからやめておこう。...って、
「ふふふ風呂?!」
「ナルトくん寝ちゃいそうなんだもの」
「いや、だからって、そんな、女性の家で...! それに、着替えがないでしょう」
それに対して、ありますよ、と返事がくる。その手には、ナルトの荷物。確かに、数日間の任務で最低限必要なものは入っている。
任務終わりでクタクタなのに、帰って家事なんて...そう話を続ける彼女は、まるでナルトの姉のようだ。
「し、しかしですねゆきさん。ナルトも年頃だし、「さんきゅー、ねーちゃん、すんげー助かるってばよ...ふぁあ」
「ふふ、ヤマトさん気にしないで。洗うのも、乾かすのも機械ですから。ナルトくんまだ寝ちゃ駄目よ」
今にも瞼がくっつきそうな部下を引きずって帰ることも考えたが、ヤマトさんもゆっくりしていって下さいね、なんて言われた日にはもう敵わない。座敷の横にある戸を抜ける背中を見送った。
するとすぐにオレンジ色の人影が急に立ち上がって彼女を追って行った。その手には、僕の鞄。
慌てて追いかけるも、時すでに遅し。水の溜まった洗濯機に、次々と中の衣類が放り込まれているところだった。
「ついでに隊長のも頼むってばよ」
「あ、あのねえ、ナルトくん...」
「隊長、独り身だからさ!俺と一緒で!」
そんな2人は僕の姿に気がつき、苦笑いのゆきさんと、してやったり顔のナルト。
「あれ、いや、隊長、俺は良かれと思って」
「ナルト、やってくれたね...君ってやつは」
この顔が見たくてやったのかい?