ナルト
□34
1ページ/1ページ
「ふああ...」
「おつかれさんだな、カカシ」
「アスマじゃない。今日はこれからか?」
「あァ。ところで、砂の国はどうだったよ?春の砂嵐で大変だったんじゃないか?」
「我愛羅...風影と同行したからね」
「そうか。...あいつらも立派になったよなあ」
「ああ...」
ナルト達が小さかった頃を思い浮かべ、ふと笑みが浮かぶ。
俺は明方に任務を終え、里に帰還した。現在は報告書を提出し、待機所で火影様からの返事待ちである。
任務が終わって、ここへ来る前。真っ先に向かったのはあの定食屋だった。
味噌汁の淡い匂いが路地に漂って、腹の虫が我慢ならなくなった。まだ暖簾が上がっていない入り口を通り過ぎ、細い路地に面した勝手口の方からお邪魔をしたのだ。
ま、"砂まみれで調理場に来てはだめです!"って怒られたけどね。
「それにしては小ざっぱりしてるなあ。銭湯に寄ってきたのか?」
「んー、そんなとこだな」
「女の家か...ンなわけねえか、任務続きだもんな」
「そーそ、もーお くたくた」
「いや、けど寝技師のお前だか「ちょっと、怒られたいの?」
エンリョしとくわ、とアスマは苦笑い。
女の家...あながち間違いではない。朝食ができるまでにとゆきに風呂場へ促されたのだ。
アスマのいうような色っぽいものではなく、とにかく砂を落としてさっぱりするようにというわけなのだが。
いつも味噌汁や照焼きなどの美味しそうな匂いの彼女は、シャンプーはどんな匂いなのだろうか。年甲斐もなくそわそわしてしまう。
そんな期待もすぐに打ち砕かれた。
脱衣所に漂うは、酒と男の匂い。
酒や男の匂いなんて、慣れたもんだが、人の淡い期待を見事に崩したそれに無性に腹が立った。
ざっと見渡せば、これから手洗いするのだろう、彼女のお気に入りの着物が入った盥があった。
店に酒の匂いはしない。着物から煙草の臭いがしない、と、いうことは...だ。
男の家しか考えられない。この匂いが誰のものかまでは思い出せない。
....ヤマトはナルトたちと数日の任務に出ているからありえないな。
シカマルにそんな度胸はない。テマリとの間柄も噂されているんだよね。
イズモ、ライドウは相手にされていない。
イルカ先生は子供たちの手前、休みを前にせずして呑まないそうだ。が、ゆきに誘われたらどうかな。
残す被疑者は....
"カカシさん、そろそろできますよー"
と、俺の思考は最有力候補の顔を思い浮かべずしてストップ。
独り身には縁のない温かい声かけには敵わない。淡い匂いに包まれた俺は、そそくさと風呂場を後にした。
「お兄ちゃんとやらも油断できないよな」
「は?」
「あ、いや、こっちの話で」
「小説の読みすぎだな。...金曜だし、たまには飲みに行かねえか」
「あはは...そうだな、今日、何もなければ」
「ごもっとも...何もないといいな。」
近頃は砂と木の葉の関係が少しずつ良くなってきているが...
アスマも暁という存在を懸念しているのだろう。渋い顔をして胸のポケットに手を伸ばした。
「あっちょっと煙草は」
「なんでだよ」
朝の一服をさせてくれとアスマが懇願する。
「だめなもんは駄目。」
だってなあ...
シャンプーの匂いが消えちゃうじゃない