ナルト
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「朝か...」
ゆっくりと身体を起こす。頭が重い。飲み過ぎたな...
結局、昨晩は寝落ち。ソファで寝ると申し出たのを強引に布団に引き寄せたが、そこまでだった。普段なら惜しいことをしたと思うところだが、自分がちゃんと寝巻きを着ていることにほっとする。
窓を開けると、涼しい風が顔を撫でて、幾らか目が覚めた。自分の部屋では慣れない、味噌汁の匂いがする。
「ゆき?」
寝起きに人の気配がある。それも、安心感に満ちた気配。何年ぶりだろうか。
ベッドを抜け、寝間着のまま洗面所に向かう。顔を洗ってタオルで拭けば、さっぱりした洗いたてのものに取り替えられていた。
いや、これは昨日の晩に自分で取り替えたものか。案外俺も几帳面なもんだな。
「おはよ」
「おう、おはよう。」
「冷蔵庫にあるもの使っちゃった。聞いたら
、いいって言ったの...覚えてる?」
「...いや、全く」
「ふふ、だよねえ」
テーブルにてきぱきと朝食が並べられていく。
ご飯、わかめの味噌汁、海苔と胡麻が入った厚焼き玉子。玉葱とおぼろ昆布の千枚漬け。甘辛のちりめんに粉山椒がぴりりと効いている。
「...完璧だな」
「乾物が沢山あって作り甲斐があったよ。やっぱり、任務で家空けること多いのね」
「ご名答。」
「よし、では、いただきます。」
「いただきます」
ぱくぱくと勢い良く食べ進めるゆき。頬が膨らんでリスみたいになっている。そんなに腹減ってたのか。折角だしゆっくり食べろよ、と半ば呆れた声が漏れた。
「朝定食の仕込みするから、ね」
「そうだったな。送るぞ」
「大丈夫、そんなに遠くないもの。ゲンマも久しぶりに事務仕事の日でしょ?朝は家でゆっくりするといいよ」
軽く礼を述べて食べ進める。千枚漬けがウマイ。卵と玉葱があればこんだけできるんだな...
「昼は中忍コンビと食べに行くかな」
「ありがとう、今日はね、鰆の粕漬けを焼いて...すまし汁...吸い口は三つ葉にするの。青菜のお浸し、胡桃の田作り」
「粕漬けか、いいな。...こないだも南瓜と胡桃とで何か作ってたな。市場に出回るのか?」
「ううん、ヤマ...山で沢山採れるから。おっぽも好物だからつい」
「ヤマ、ね...」
ゆきは、いつになく早口で胡桃は栄養が豊富だと説明をしたあと、飯を掻き込んだ。
「ごちそうさ「なァ」
軽く合わせられた彼女の手を掴む。
「好きな奴がいるのか」
「...!?」
銀色の簪、最近よく出される食材。
現に、真赤に染まった頬。
目は溢れ落ちそうなくらいに見開いている。
「あ...ええと...」
「ハハ、胡桃のことだよ」
「...え」
パッと、掴んでいた手を離し、食器を流しへと運ぶ。律儀に手伝おうと立ち上がる彼女を仕込みへ向かうよう促した。
だが、何か不満そうにこちらを見ている。
そういや、片付けまでが料理だと言ってたな。
「...つまんない冗談。」
「おーお、厳しいな。...悪かったよ、そうむくれん「いるよ、好きな人」
「!?!」
突然のカミングアウト。危うく茶碗を落とすところだった。振り返ると、ゆきは玄関の方で悪戯ぽく笑って
「胡桃を、か、私の、かは教えてあげない」
"ありがとう、お邪魔しました"
そう言って、パタン、とドアが閉まっていった。
急に部屋がしん、となる。
自分の家なのに居心地が悪くて、水を勢いよく出して皿を洗った。
「ばっかだなあ...」
どっちにしても同じじゃねえか。