ナルト

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「っあー、やっぱ旨え」


一気にビールを流し込む。すでに3本ほど缶が空いていて、出前の寿司は思いの外少なくあっという間になくなってしまった。空きっ腹にアルコールがガツンときているが、それも悪くない。

自分はソファに座り、ゆきの奴はこっちが楽だからと床に座って足を崩している。

ゆきはほろりで飲もうと申し出たが、たまには準備片付けを忘れて飲めばいい。出前を頼んだと言って、強引に俺の家に連れ込んだのだ。


「ふふ、今日は進むねえ。仕事終わりは格別でしょう」

「おう、最高だな。ずっと会議だったからなあ」

「どんな話したの?カカシ先生みたいに教え子を持つとか?」

「いや、それはないな」


そっか、とあっさりその話は終わる。俺が続きを言わないことからして、機密事項であると察したようだ。


「こういうのは察しがいいな、お前。」

「伊達に大名の姪っ子さんの料理番してないよ。上がどうとか世がどう動くとか、料理そのものには関係のないことだったから。その名残かな」

「へぇ。じゃあなんで聞いたんだ?」

「ホントは知りたいんだもの」


頭に疑問符が浮かぶ。料理に関係ないのなら聞かないで良いんじゃねえのか?


「ゲンマのこと。」

「ゴホッ、な、んだよソレ」

「だってこんなにいつも会ってて、仕事のことあんまり知らないんだもん。」



なんだよお前、缶1本と言ってたくせになんだかんだ飲み進めて酔っ払ってんのか。

少々強引かと思ったが家飲みにしてよかったかもしれない。

出会いの場で女が質問をしてくる時は、大抵好意を持ってくれている時。その後も、誘いに乗ることが多かった。

いつも兄貴だ兄ちゃんだと言われてたわいない話をしていたが、改めて自分のことを知りたいと言われるとは。


「任務が終わったらお帰りって言いたいし、気分に合う献立を出してあげたいし」



酒で顔を紅くしたゆきがぶつぶつと言う。

くそ、頬が緩みそうだ...


「なあ、それって...

「うん、家族同然だもん。」

....だよなあ」


そこは相変わらずかよ。やっぱり色恋沙汰に関しては察しは最悪なようだ。期待した俺が馬鹿だった。缶を右手にぶら下げたまま、ソファの背もたれに体重を預ける。


「ふぅ、暑い。」

「まぁ飲んでっからな、冷房入れるか?」

「ううん、あの、シャワー浴びていい?」


ゴフッ


「それで、Tシャツも、着物で寝ちゃうといけないから。」

「お前ソレ、他の男ん部屋行って言ってねえだろうな」

「あ、ごめん。ちょっと図々しすぎたね」

「いや... 」


そこは問題じゃなくてだな。もしかしてゆきはそういう経験が無いのか?もはや恋愛の経験もないのか?


「やっぱダメ?」


駄目じゃない。けど俺が駄目だコリャ。
下から見つめてくるくりっとした目は、どうも男心と下心というものを分かっちゃいない。


「はあ...ズボンもいるんだろ、出すから」

「うん、ありがとー」


少し手が震える。一線を越えるか否か。
癪だが、ライドウとアオバでも呼ぶか。


案外俺も奥手な方みてえだ。

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