ナルト

□27
1ページ/1ページ

「カカシさん、か」

「今日はカカシじゃなくてカツオですよ〜」


生姜のきいた甘辛の匂いが立ち込めた店内。

薄茶に色づき、ごろっと鰹の混ぜ込まれたご飯が目の前に置かれる。今日のおすすめだそうだ。上には三つ葉が散らしてある。

ほくほくの飯を目の前に腹の虫が鳴き、涎が出てきそうになる...のが何時なのだけど。


「そうか、カツオ先輩か...」

「大丈夫ですか?今日、いつもより顔色がよくないです。夏バテとか...」

「はぁ、どーせいつもよくないですよ」

「.....」





"カカシさん、いつもありがとう。任務行ってらっしゃい"

"んー、行ってきます。ゆきも頑張ってね"

10分程前、ほろりの暖簾をくぐってすぐに出くわしたのがこれだ。その後"カカシさん"とやらは"ゆき"....さんの頭に右手をぽんと置き、任務に向かおうとこちらに身体を向ける。

こちらはというと、そんな光景に開いた口が塞がらない、塞ぐ力も無くして一瞬(とは思えぬ長く苦しい時間であったが)立ち尽くした。先輩に声を掛けられた気がしたが、その先の少し赤らんだ頬から目が離せなかった。

彼女がこちらに気付く前にと踵を返したのだけれど、

"ヤマトさん!おひさしぶりです。任務お疲れ様、こちらへどうぞ"

久しぶりの、それも喜色満面の彼女を見ては、僕の身体はいやおうなしに席へと向かってしまったのだった。




いやおうなしといえど腹は空く。久しぶりのまともな食事。それに、ゆきさんのつくる食事は大好物だ。


「...いただきます」


カチャ、カチャと陶器のぶつかる音が響く。

"はい、いっぱい食べてくださいね"
いつもは聞こえてくるはずのフレーズが聞こえてこない。そんなだから、どうも箸が動かし難くて居心地悪い。

もちろん、他の店ではそんな声かけはないし、出されたら食べてもいいものなのだが。

....それもそうか、八つ当たりしてしまったんだ。気分を害してしまっただろうな。
急に心配になり、顔を上げる。

すると、眉間に皺を寄せて俯き気味の彼女。初めて見るしかめっ面。あぁ、ゆきさんの気遣いを踏みにじってしまったんだ。


「あの」


すると彼女はすっと俺の前から消え、勝手口から外へと向かう。



「ゆき、さん、」



昼下がり15時過ぎ。パタン、と虚しく戸の音が響く。


やってしまった....!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ