ナルト
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「カカシさん、か」
「今日はカカシじゃなくてカツオですよ〜」
生姜のきいた甘辛の匂いが立ち込めた店内。
薄茶に色づき、ごろっと鰹の混ぜ込まれたご飯が目の前に置かれる。今日のおすすめだそうだ。上には三つ葉が散らしてある。
ほくほくの飯を目の前に腹の虫が鳴き、涎が出てきそうになる...のが何時なのだけど。
「そうか、カツオ先輩か...」
「大丈夫ですか?今日、いつもより顔色がよくないです。夏バテとか...」
「はぁ、どーせいつもよくないですよ」
「.....」
"カカシさん、いつもありがとう。任務行ってらっしゃい"
"んー、行ってきます。ゆきも頑張ってね"
10分程前、ほろりの暖簾をくぐってすぐに出くわしたのがこれだ。その後"カカシさん"とやらは"ゆき"....さんの頭に右手をぽんと置き、任務に向かおうとこちらに身体を向ける。
こちらはというと、そんな光景に開いた口が塞がらない、塞ぐ力も無くして一瞬(とは思えぬ長く苦しい時間であったが)立ち尽くした。先輩に声を掛けられた気がしたが、その先の少し赤らんだ頬から目が離せなかった。
彼女がこちらに気付く前にと踵を返したのだけれど、
"ヤマトさん!おひさしぶりです。任務お疲れ様、こちらへどうぞ"
久しぶりの、それも喜色満面の彼女を見ては、僕の身体はいやおうなしに席へと向かってしまったのだった。
いやおうなしといえど腹は空く。久しぶりのまともな食事。それに、ゆきさんのつくる食事は大好物だ。
「...いただきます」
カチャ、カチャと陶器のぶつかる音が響く。
"はい、いっぱい食べてくださいね"
いつもは聞こえてくるはずのフレーズが聞こえてこない。そんなだから、どうも箸が動かし難くて居心地悪い。
もちろん、他の店ではそんな声かけはないし、出されたら食べてもいいものなのだが。
....それもそうか、八つ当たりしてしまったんだ。気分を害してしまっただろうな。
急に心配になり、顔を上げる。
すると、眉間に皺を寄せて俯き気味の彼女。初めて見るしかめっ面。あぁ、ゆきさんの気遣いを踏みにじってしまったんだ。
「あの」
すると彼女はすっと俺の前から消え、勝手口から外へと向かう。
「ゆき、さん、」
昼下がり15時過ぎ。パタン、と虚しく戸の音が響く。
やってしまった....!