ナルト
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「あれからもう1年かあ」
軒先きの薄桃色の暖簾をくぐりながら、さらさらと吹く風に目を細める。
木の葉にお店を構えて一年が経った。サザエさん方式で歳は増えないけれども。
さて、お店の方は忍たちに支えられながらお店を営むことが出来ている。そうだ、初めてのお客さんはナルトくんで...
「あっ、ゆきねーちゃん。またワキゲ育ててんのかあ」
そうそう、こんな感じで水遣りしてたところにやってきたんだっけ。って、おい。
「も〜ワケギだってばよ!じゃなかった、これはあさつきよ」
「あり、また間違えたか」
「今年はワケギは植えてないの。ナルトくんが間違うからねえ」
「んだよー、俺だって3度目は間違えねってば」
「ほんと?じゃあ来年は植えようか」
「えー、俺、あの"ぬた"ってヤツ苦手だってばよ」
「ふふ、まだまだお子ちゃまね」
"うるへー"とくちを尖らせている彼。こんな弟がいたら毎日賑やかで楽しいんだろうななんて。
「そういえば今日はヤマトさんはいらっしゃらないの?」
「ん?ヤマト隊長?今日は綱手のばーちゃんに呼ばれてっけど...」
「そっかあ、残念」
「! やっぱりゆきねーちゃんは隊長のことが...にしし」
「そう、いつも顔色悪いから心配で。カカシさんも色白で怠そうな顔してるけど...」
あ、ナルトくんが白眼発動しちゃった。
「じゃなくてね、初めてナルトくんと話してた時に上からヤマトさんがこう、」
スタッ
「と、あれ、ゲンマにいちゃんかあ。」
「んだよ、不満か?」
「ううん、いらっしゃい。食べてく?」
「もちろん。あ、こいつらのも頼むな。」
どうも、と会釈してくれたライドウさんアオバさん。麦茶ついじゃうなー、とすっかり常連。温いから氷入れてねって私も甘えてしまう。
「ナルトくんも食べてく?」
「ううん、今はいいや。」
「そっか」
「だって、ねーちゃんが食べてく?って聞くとき大抵サービスなんだもんな。4人分もなんて申し訳無いってばよ。」
くぐりかけた暖簾がぺし、と顔に当たる。自分にそんなくせがあったなんて。それだけたくさんお店に来てくれたのね。
「夜にまた来るってばよ!サクラちゃん誘ってくっから、デザート準備してて!」
「まっ、女の子のためにデザートの予約なんて粋なことしちゃって」
「へへ、またな!」
あと隊長と先生も誘うってばよー!って大声で補足しながら駆けていく。
"いつも、ありがとう、"
眩しい黄色のせいか、ふと溢れた幸福感か。
眼がきゅうっとなって困ってしまう。
"ゆき、どうした?"
ゲンマが驚いた顔でこちらを覗く。顔が赤い、眼が潤んでる、熱か、ナルトか、と質問攻めで、重症だとライドウさんアオバさんが笑う。
"重症なら笑えねえだろうがっ"
"はは、重症はお前の話だよ。な?"
"ああ"
こぢんまりしているとはいえ、店内も満席の日が増えた。通りの賑わいにも負けないくらい。
昼定食は売り切れなんてことも多いのだ。
「ふふ、今日はたくさんおかわりしてね」
「こないだもサービス言ってたろ。早くに売り切れちまうぞ」
「それはそうなんだけどね、」
お客様感謝デー、やっぱりやめらんないの。