ナルト

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「その髪飾り初めて見るな、似合ってる」

「ふふ、大人っぽいでしょ」

「ゆきにしては、な」



待機所に向かう途中、買い物中のゆきに出くわした。銀鼠の縮緬に寒色系の小物でめかし込んでいる。

ふと目に付いた見慣れない銀製の髪飾り。長方形のシンプルなデザインでこいつらしくない。それがどうも引っかかった。

ゆきは、どういう意味よー、とぶつくさ言いながら店先の食器を選定している。



「もうすぐ春でしょ、なんだか食器も新しく華やかにしたくなっちゃって」

「ふうん。店の奥のアレどうだ?綺麗だな」

「ほんとね。けど金箔をあれだけ使ってるの買えないよー」

「だから、サービスやめろってのに」

「...今日のゲンマいじわる。」

「髪飾りが気に食わねえ」



"さっきは褒めてくれたのに..."うっすらと聞こえる声を背にしてその場を後にした。

待機所に置かれたストーブで暖をとりながら次の命を待つ。やかんから蒸気が勢いよく噴き出した。はあ、一服しとくか...



「ため息ついて、らしくないな。」

「ライドウ」

「恋?」

「いや...ああ」



どっちだよ、と突っ込まれる。あながち間違いじゃない。が、恋というほど俺は若くない。...三十路なんだよなァ。



「女がよ、いつものシュミと違うもの持ってたらどうだと思う」

「路線変更?それが似合ってなかったのか」

「いや、似合ってた」

「ゆきちゃんも成人して暫く経ったんだ、そりゃあ趣味もかわるだろ」

「そんなもんか、ってゆきとは言ってねえだろ」

「他に誰がいるんだよ、ま、男のほうが有力だよなぁ、ゲンマにいちゃんよ」


誰がにいちゃんだ、千本刺されてえのかコラ。チラと口元を動かすと、まあ一服しに来たんだろうと茶を勧められる。

押し付けられるように手にした沸騰直後のお茶は、薄い磁気の湯呑みに注がれていて指を軽く火傷した。

おいおい、熱いお茶なら湯呑みは厚口してくんねえと。そう思ったと同時に、ゆきの食器選びのこだわりに感化された自分が可笑しくなった。



「今度はニヤついてどうしたんだ」



先刻から頭に浮かんでしょうがない、髪飾りの贈り主候補たち。



「あ、おい、それ熱いぞ」

「んな奴ら知るかよ、」



熱い熱いお茶をぐいと喉に通した。



「ぐ」

「ほら言わんこっちゃない。」

「...ポッと出の奴らとは付き合いの長さが違うってもんだ」

「はぁ」




ヒリヒリと口内が疼く。




...ち、やっぱ冷ましゃよかったな

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