ナルト
□25
1ページ/1ページ
「その髪飾り初めて見るな、似合ってる」
「ふふ、大人っぽいでしょ」
「ゆきにしては、な」
待機所に向かう途中、買い物中のゆきに出くわした。銀鼠の縮緬に寒色系の小物でめかし込んでいる。
ふと目に付いた見慣れない銀製の髪飾り。長方形のシンプルなデザインでこいつらしくない。それがどうも引っかかった。
ゆきは、どういう意味よー、とぶつくさ言いながら店先の食器を選定している。
「もうすぐ春でしょ、なんだか食器も新しく華やかにしたくなっちゃって」
「ふうん。店の奥のアレどうだ?綺麗だな」
「ほんとね。けど金箔をあれだけ使ってるの買えないよー」
「だから、サービスやめろってのに」
「...今日のゲンマいじわる。」
「髪飾りが気に食わねえ」
"さっきは褒めてくれたのに..."うっすらと聞こえる声を背にしてその場を後にした。
待機所に置かれたストーブで暖をとりながら次の命を待つ。やかんから蒸気が勢いよく噴き出した。はあ、一服しとくか...
「ため息ついて、らしくないな。」
「ライドウ」
「恋?」
「いや...ああ」
どっちだよ、と突っ込まれる。あながち間違いじゃない。が、恋というほど俺は若くない。...三十路なんだよなァ。
「女がよ、いつものシュミと違うもの持ってたらどうだと思う」
「路線変更?それが似合ってなかったのか」
「いや、似合ってた」
「ゆきちゃんも成人して暫く経ったんだ、そりゃあ趣味もかわるだろ」
「そんなもんか、ってゆきとは言ってねえだろ」
「他に誰がいるんだよ、ま、男のほうが有力だよなぁ、ゲンマにいちゃんよ」
誰がにいちゃんだ、千本刺されてえのかコラ。チラと口元を動かすと、まあ一服しに来たんだろうと茶を勧められる。
押し付けられるように手にした沸騰直後のお茶は、薄い磁気の湯呑みに注がれていて指を軽く火傷した。
おいおい、熱いお茶なら湯呑みは厚口してくんねえと。そう思ったと同時に、ゆきの食器選びのこだわりに感化された自分が可笑しくなった。
「今度はニヤついてどうしたんだ」
先刻から頭に浮かんでしょうがない、髪飾りの贈り主候補たち。
「あ、おい、それ熱いぞ」
「んな奴ら知るかよ、」
熱い熱いお茶をぐいと喉に通した。
「ぐ」
「ほら言わんこっちゃない。」
「...ポッと出の奴らとは付き合いの長さが違うってもんだ」
「はぁ」
ヒリヒリと口内が疼く。
...ち、やっぱ冷ましゃよかったな