ナルト
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「そっか、お兄さんのような存在なんだね」
カウンター越しに教えてくれた話に、胸を撫で下ろす。皆にバレちゃ面倒だから、ほんとうにこっそりと。
「じゃあゲンマの小さい頃の面白い話聞かせてちょうだいよー」
「いつもスカしてて隙のないやつだからなあ」
「もう、アンコ、アスマったら...」
「そういう紅先生も聞きたそうすけどね」
酔っ払い達が店主にあれこれと質問攻めをしている。ゆきさんは悪戯ぽく笑いながら、それに応じる。おいおい勘弁してくれよ、と兄貴分の情けない声。可愛い妹分には敵わないようだ。
ゆきさんの小さい頃の話も同時に聞けて、可愛いらしい彼女の姿を思い浮かべ頬が緩む。何ニヤけてんの、と先輩に言われたけど、それはお酒のせいにしておいた。
よく転けてその度に鳥が薬草を、ゲンマさんが絆創膏をもってやって来てくれただとか。元は定食屋の娘さんで、昔からおにぎりが得意なのだとか。
さあて、という声と台所から白い湯気とお米の甘い香りが漂ってきた。
「そろそろ〆にしましょうか。お茶漬けかおにぎり、どちらにしますか?」
みんな口々に注文をしていく。そりゃあ得意といわれたらおにぎりしかないでしょう。そう思った矢先、カカシ先輩とゲンマさんが口を開いた。
「「お茶漬け9人前で」」
なんで勝手に決めるのだとか、そこはおにぎりでしょ、とかガヤがとぶ。僕も同感だよ。
「大丈夫ですよ、気を使ってくれなくってもお好みに合わせてご用意できますよ」
「んー?鯛茶漬けだろ、切り身もきっちり10人前用意してるんじゃないの」
「お前...ちゃっかり自分のも切ったのか」
「あ、ばれちゃった?へへ...」
結局〆は全員鯛茶漬けになった。おいしい。2人がはるばるお使いに行ってくれた感謝もあり、アラまで綺麗に処理をして、出汁にも使ったそうだ。
"あーらカカシったら、よく見てるのね!"
"あ?"
"おーいゲンマくん殺気はやめてくれ"
甘党のアンコさんに、と気を利かせて甘味も用意してあった。そのため彼女は上機嫌で、
座敷はすごく賑やかだ。
"ねえ、ヤマトさん"
とばっちりが来たら面倒だから僕はカウンター席でちびちびやるのがいいや。
「ヤマトさん」
「ぅあ、はい、なんでしょう」
カウンター越しの会話は、今は隣同士となった。私も、みんなとお茶漬け食べたい!との要望で。右肩がどうもこそばゆい。
「ごはん、先輩方に譲ってばかりで、あんまり食べられてないでしょ?何か一品どうですか?」
「ばれちゃいましたか。いいんですか?いただいちゃっても」
驚いた。よく周りを見れる、ほんとうに、気遣いの素敵な方だ。
"じゃあ、おにぎり。"
ゲンマさんとカカシ先輩がどうしてもおにぎりを食べさせたくないようだったから、こっそりと伝える。それを察してか、ゆきさんの返事は目を少し細めただけだった。
ふと背後から複数のチャクラの気配。気になって振り向くと、カカシ先輩とゲンマさんの殺気だった。
まわりが囃し立てて、もっとやれやれ、一人の女を取り合ってなんて...、いけー寝技師!なんてのが聞こえてくる。はあ、店の中で何やってんだ。
それぞれの千本と右手にチャクラが流れ出した。まずい、小柄なお店でこの人たちが暴れたら、
「ヤマトさん、具は何が...「千ど「四柱牢の術!」
「えっ」
「ギャー!!!」
パラパラと木屑と瓦が落ちてくる。
グンと上に伸びた四柱牢は天井を突き抜け、屋根を突き抜け、満天の星空の下。
だせー!とよっぱらい達の叫び声が上から聞こえてくる。ふう、一件落着...あ。
ふふ、といつもの笑い声が聞こえてきたが、店主の顔色を伺う勇気はでなかった。彼女の手元のおにぎりから、ごうごうとチャクラが噴き出ている。
「ヤ、マ、ト、さん?」
「ゆき、さ、ん」
うわぁああ!
ほ、火影式耳順術・廓庵入鄽垂手!