ナルト
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「めんどくせぇ...」
「まあ、まあ、そういうなって。くぁ〜!うまっ!」
「先輩、よくそんな甘いもんずっと食べてられますね」
五代目の雑務手伝いが終わり、次なる仕事は居酒屋か定食屋かの買い出し手伝いだ。本当はオフだったが、ゲンマさんが何時になくゴリ押ししてくるもんだから、仕方なく引き受けることにした。悪りぃな、飲み奢ってやるよ、とのゲンマさんの言葉にいち早く食いついたコテツ先輩と一緒に。
「疲れた後は甘いもんが1番なんだよ、シカマルも食うか?」
「いらねぇっす」
「つれねーなあ。で?こんなに魚介類持って今からどこ行くんだ」
「....大通りの角の定食屋に届けるんすよ。昨日、チョウジとナルトがよく行くって言ってたとこの」
先輩はンーといって話を聞いちゃいねえ。水飴に夢中だ。ああ、今日は天気がいいな...
だんだんと空模様が夏らしくなってきた。突き抜けるような青に、遠くの山の奥へ積乱雲がどんと構えている。夕方には一雨きそうだ。
どっちかというと、ゆっくりと風に流される軽い雲の方が、見てていいんだけどな。時が止まったような雲も悪くないか...
「ゆきねーちゃん!来たってばよ!」
「ゆきさん、ごはんウルトラスーパー超大盛りで!」
「超大盛りで5合あるんだぞ?!それ食いすぎだってばよ」
暫し訪れたのんびりとした時間が、また賑やかしく動き出した。いつもの面子だ。ナルトが意外にも冷静につっこんでいる。
「そりゃ食いすぎだ、チョウジ」
「あ、シカマル。どうしたの、そんな大荷物でー、コテツさんまで」
「俺ら手伝いで来てんだ、ゲンマさんの。」
「...の、知り合いの手伝いでな」
めんどくせぇ、そう呟きかけた瞬間、ナルトとチョウジにむけた歓迎の声が聞こえてきた。
「いらっしゃい、ナルトくん、チョウジくん。今日は来ると思って、ふふ、多めにご飯炊いてるのよ。」
"やったー!!"
"さすがねーちゃんだってばよ!"
食べ盛りが、やいやい言いながら暖簾をくぐっていく。
「あら、そちらの方はー....あぁ!もしかして、お手伝いしてくださっ...」
「こっコテツです!!!ゲンマさんにはお世話になってます!!」
「いえいえ、こちらこそ、お世話になります」
へえ、ゲンマさんはこういう女が好みだったわけね。...コテツ先輩も。
礼儀正しく控えめで、和服をしゃんと着ていて。母ちゃんとは大違いだ。料理もできるし、俺は結婚するなら...って何考えてんだ。
「あの、コレ。頼まれてた分っす。」
「ありがとう、コテツさん、シカマルさん。ゲンマが無理言ったようで、ごめんなさいね。ひゃ、綺麗な魚!」
"綺麗っても、普通の鯖と鯛じゃないですか"とコテツ先輩がとんちんかんな事を言っている。はあ、鮮度のことすよ。
「ほんとう、助かりました。今日の宴会ぜひいらしてね。あと、ほろりの定食券です。お礼になればいいのだけれど。」
手作りだろうか。オクラ判と、手書きの"ほろりの定食"の文字が可愛らしい、5枚綴りの券を受け取った。
「わ、ありがとう!!絶対来ます! 早速だけど、明日のメニュー何です?」
「ふふ、こちらこそ。明日は、この鯖で味噌煮の予定です。しめ鯖と迷っているのだけど」
味噌煮がいいっす。そう言いかけた途端、ナルトとチョウジが まだかまだかと大騒ぎを始めた。
"あらあら、ごめんね、すぐ行くからね"
子供をあやすように声を掛け、丁寧に会釈をして店へ戻っていった。
「んー、結婚するならあんな子がいいよな!」
先輩がいそいそと食券をポーチに納めながら、俺に同意を求めてきた。ちくしょ、否定はできねえ、けど、
「いや、まあ、...あ」
返答に迷い上を見上げると、さっきの青は何処へやら、山の向こうに構えていた積乱雲が頭上へと移動してきていた。
「やべ、こりゃ土砂降りで酷え目に遭いますよ。」
先輩を急かすが、ええ、なら食ってこーぜ、と渋っている。
「何いってんすか、明日食べにくりゃいいでしょう。」
そう言うと納得したようで、2人待機所へと歩きだした。"味噌煮とか肉じゃがとか、和食に弱いんだよなあ、オムライスとか可愛いのもいいけど!"なんて聞いてもいないのに、隣で好みを言い続けている。
明日、俺も食べに行こうかと考えたが、この調子だ、それに何かあったような。
...明日は母ちゃんの手作いか。
あぁ、めんどくせえ