ナルト

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「あ!先生も来てたんだ!」



少し肌寒い春の夜。教え子たちの成績をつけ終わって帰る頃にはすっかりあたりは暗くなっていた。屋台の赤い光と立ち上る湯気が温かい。

今日は給料日、いざ、リッチに豚骨味噌チャーシュー大盛りを食べよう!としたところ、すっかり立派になった教え子がやってきた。


「ナルトじゃないか」

「へへ、やっぱ豚骨味噌チャーシュー大盛りだよな!おっちゃん、2つちょーだい!」

「へい!」

「2つ?今日は きつい修行でもしたのか?」



"すみません、一つは普通盛りで"



眩しい黄色の奥に、そっと店主に耳打ちする薄桃色の小袖が見えた。な、なんだと....!



(ナルト...俺を差し置いてデートなんて)

「え?なに言ってんのイルカ先生」

(そうかー、ついに彼女を連れて来たか。そうだよなあ、ナルトももう16だもんなあ)


教え子に先を越されたようで、嬉しいような悲しいような複雑な気分だ。なかなか古風な趣味の子なんだな、ん、顔がよく見えないな...

そう考えていると奥の方から店主とアヤメさんの声がして、耳を傾けながらラーメンを啜る。ナルト、お前も頼んだんだから、ジト目でこっちを見るんじゃない!食べづらいだろ...



「お嬢ちゃん、ナルトのコレかい?綺麗な着物でデートなんだろ」

「お父さん!ごめんなさいね、まったく突然失礼でしょ」

「いやーすまんすまん こいつをちっこい頃から見てるもんだから つい、なあ」

「ふふ、気にしませんよ。それに、残念ながらそうじゃないんです。ねえナルトくん」

「そうそう!ゆきねーちゃんてば実はけっこー歳取ってんだってばよ!俺より10コぐらい上?」



また女性に対して失礼な...



「って、それだと俺も歳取ってるってことじゃないか」

「ごめんごめん、イルカ先生。」

「ナルトくんの先生?」


にしし。と笑みを浮かべる後ろから可愛らしい声とともに、顔をのぞかせた女性。



「そう!そう!アカデミーの頃の先生でさ!...イルカ先生?」

「っあ、ああ。ナルトがお世話になります」

「こちらこそ、私のお店の常連さんになってくれたり美味しいお店教えてくれたり。お世話になってます」


ふふ、と彼女が笑いかけた時、へいお待ち!とドン、ドンっと2人の前にラーメンが置かれた。早々とがっつくナルトに反して、"ひゃぁ、美味しそう!"と目を輝かせながら、丁寧に合掌をしている。


頬を膨らませてふう、ふうとラーメンを冷まして口に運ぶ。スープを一口飲んで、満面の笑み。おいしいね、おいしいね!とナルトに話しかけながら冷ましては口に運ぶ彼女。



「あのう、顔に何か付いてます?」

「! いえ、すみません。美味しそうに食べてるなあ、と思いまして」

「ふふ、だって本当に美味しいんですもの」




"嬉しいこと言ってくれるねえ。これはサービスだ!"
"ずるいってばよ、俺にも煮卵くれよう!"


そんな会話を遠巻きに聞きながら、暖簾の隙間を抜ける夜風で頬を冷やした。

今気がついたけれど、



頬に葱が付いているのはご愛嬌、かな。

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