ナルト
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「いやあ...ご迷惑おかけしちゃって、あはは...」
小さな店の少し奥まった畳張りの部屋。お香の甘い香りに包まれて寝転んでいた所、醤油の甘辛い匂いがまじり目を覚ました。
「いえ、それより、体調はいかがですか?先ほどピンクの髪の忍者さんが来てくださって...」
ああ、サクラが来て治してってくれたのね。チャクラが限界なのにナルトが急げ急げと引っ張るもんだから、食事を目の前に倒れこんでしまったのだ。
襖越しに"しゃんなろー"と聞こえてくる。何か壊してなきゃいいけど。ま、大丈夫でしょ
「だいぶ楽になったよ。ところで、ソレは何です?」
「え?」
彼女の後ろに隠れていて見えないが、甘辛い匂いはそちらから漂ってくる。
「ええと、おにぎりと田作りとかです。お布団のままでも食べやすいかと思って。あ!もう大丈夫そうでしたらお粥や定食もご用意できますよ」
気が利くねえ、これがヤマトも来たがってたわけね。
"ずるいっすよ... せんぱぁい"
あのいや〜な顔を思い出す。今頃、押し付けた書類をグチグチいいながらやってるんだろう。ま、ちょっとしたものなんだから、すぐ片付けて来るでしょーよ。
「か、カカシ先生?」
「え 先生」
「ナルトくんと、ピンクの髪の子がそう呼んでいたので」
「成る程ね、ま、いいか。そのおにぎり頂きます。」
店主の返事より先に ひと口かぶりついた。
"すごーい...手品みたい、口あてしたまま、"
そんなふうに聞こえてきたが、俺はそれどころじゃない。何だ、この...
「このおにぎりこそ、手品みたいですよ。美味いです。しっかり握ってあるのに、こう、ほろっとほどけて」
それだけじゃあない。炊きたてなせいもあるだろうが、他の温かい感覚。チャクラが漲ってくる。この子まさか、
"ふふ、あたり。"
突然、そういって嬉しそうに笑った。
え?あたり?なーにが?
「ほろり、お店の名前の由来です。小さい頃、実家のお店でつくったときに、同じように褒められて、おにぎりだけは自信があって。」
いつの間にかクイズが始まっていたようだ。じゃあチャクラについてこちらから一問、
"なんでだろうなー、アツアツごはん手にのせて、我慢するように手に力をいれてー...うーん"
何やら勝手に喋っている。ヤマト、お前から聞いてたのと少し違うぞ、おしとやかどころかマイペースのやんちゃ娘に見えるんだけど。
ふ、とチャクラを感知した。襖の向こうに気を向けたが、どうやら発生源は彼女の手のようだ。
「おじょーさん、ちょっと、その手を見せてくれないか」
「手?あ、あんまり綺麗じゃないですよ、火傷だらけで....」
彼女の手を取ろうとした瞬間、今度は別のものを感じた。
「ゆき、熱燗。」
ガラと襖が勢い良く開いて、そこには実に不機嫌そうな男が立っていた。
ゲンマくん...殺気はやめてくれよ。
「ああ、はいはい。じゃあ、カカシ先生、良くなったらいつでもこちらに来てくださいね。」
「しっかりお休みになってください」
チラチラ光る千本にギロと睨まれたような感覚。そしてピシャリと戸が閉められる。
...ゆきちゃんというのか。
あはは...
こりゃ迂闊に近づかれなーいね。