ナルト
□08
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「阿呆か」
驚いた。10年前、忽然といなくなったゆきが今目の前にいる。妹のように(いや子分か)可愛がってた奴が大人の女になっている。それより、
「おにぎりの具を間違えてクビかよ。それは人に言えたもんじゃねえなあ。」
「だあから言いたくなかったのにゲンマ兄ちゃんが」
「まさかそんな理由とは思わないだろ。あとその兄ちゃん呼び。俺もうそんな歳ないし こっぱずかしいしやめてくれねえか」
「ええー」
中忍昇格したころからの行きつけの定食屋。そこでいつも台所に立って盛り付けを手伝っていたのがゆきだった。
2人が初めて会話らしい会話をしたのは里外の林の中。俺は任務帰りでくたびれて木蔭で休んでいた。
木の葉の里付近だったが、いつもと違うチャクラの気配。とっさに木の上に登って千本を強く咥え、相手が姿を見せるまでじっと待つ。
ガサと茂みが揺れたと思えば、10歳くらいの女の子が顔をだしている。あの台所の奥でよく見かけた顔、ゆきだ。
「おっぽー!!どこー!」
茂みをくぐったせいかところどころに切り傷を作った彼女。両手に胡桃を握りしめ、必死で"おっぽ"と叫びながら何者かを探している。
「ああっ」
ドシャ
「うぅ、いててて....」
茂みからピョンと飛び出した瞬間、運悪く木の根につまずき転んでしまった。手はついたものの、小石のせいで指や膝から血が出ている。仕方ねえ、確か医療パックに絆創膏が...
! ..またか
次の瞬間、医療パックに伸ばした手は ゆきを横抱きにしていた。先程と同じチャクラを感じ、彼女に危険が及ばないよう咄嗟に飛び出したのだ。
「じっとしとけよ、忍が潜んでるかもしれねえ」
「あ、おっぽー!」
「ばっ、静かにしろっ....て、この鳥いつの間に」
ゆきの腕に 尾の長い真っ白な丸っこい鳥がとまっていた。口によもぎをくわえている。
「いつも怪我した時に来るのね、あ!よもぎ持ってきてくれたの」
"チュン"と応える様に鳴いた。人間の言葉が解るのか?さっきのチャクラは誰のものなんだ?この鳥はいつ飛んで来たんだ?
「ふふ。真っ白で、薬草も持ってきてくれて、お医者さんみたいね。あいててて...」
頭の中が疑問だらけの俺なんで露知らず、ゆきは呑気に鳥と喋りながら傷の手当てをしていた。
傷...血... いや、そんなばかな。
印なんて結んでなかったぞ。カカシさんが子供に講習したときに言っていた"ドーン"もなかったはず、
鳥が現れるまでの一連の流れをリプレイする。
あ、ここじゃねえか。
「お前、口寄せができるんだな。」
「ん?これのこと?」
「はあ?」
彼女の方を見ると、ゆきがかじっている胡桃を鳥がつつこうとしてじゃれあっていた。ほんと、呑気な奴。ちげーよ、と思わず溜息が零れる。
俺の疑問は解決した。さっきから感じるチャクラはこいつのもの。茂みで出来た切り傷からの血と、転けて手をついた瞬間、ドーン。だったんだ。あれ、印はいつ...
疑問は解決してなかったようだ。
印ともう一つ、
ドーンて何だよ、カカシさん。