ナルト

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「僕は定食と同じ量でお願いします」


ナルトはごはん超大盛りを頼んじゃって、ったく、遠慮というものを知らないんだから。


「かしこまりました」


偶然見つけた小料理屋の店主がふわっと笑顔を浮かべる。それに釣られて口元が緩む。ああ、これは下心じゃなくって、やはり笑顔には笑顔で返すという紳士的なものであってだね...

それにしても若い店主だなあ、いくつ位だろう。くりっとした眼と愛嬌のある顔つきは僕よりナルトに近いように見えるが、口調や動作は大人びている。お酒も扱って通じているようだし、成人してしばらくは経っているよな。綱手様のこともあるし、女性は見た目で判断しづらいなあ。



「おまちどうさま」


コト、と音がして目の前に料理が並べられた。


「うげーっ、ついに野菜、が...あれ? 」


料理を目の前に、ぱちくりと驚いた表情のナルト。この子のことだ、以前カカシさんに食べさせられた竹ざるてんこ盛りの生野菜でも想像してたんだろう。それとはずいぶんとかけ離れた、彩りの可愛らしい一品料理が並べられている。


「なんか見たことないのがあるってばよ。ゆきねーちゃん、この饅頭なんだ??」

「それは、里芋饅頭の餡掛けよ、中に挽肉と
筍とかが入ってるの。こちらは肉巻き、お煮しめ、大根おろしの吸い物、根菜と辛子明太子の塩きんぴら。あとカルシウムが足りないから、いりこの田作り」

「んー?聞いてもよくわかんないけど、いー匂いで美味しそうだってばよ!いただきまーす!」

「あはは、どうぞ召し上がれ」


ああ、野菜の苦手なナルトでも食べ易いように小さく刻んだり甘からくしたり、肉と合わせたりしてくれたのか。店主の気遣いに感謝する。


彩り豊かな料理に夢中なナルトとはうってかわって、ついつい僕は田作りに目がいってしまう。いりこに混ざっている薄茶色のもの。
カリと噛みしめると、ああやっぱり。


「これ美味しいですね。僕、胡桃が好きで」

「あ、ありがとうございます。美味しいですよね。私も胡桃入りの田作りが好きで、作ったはいいものの自分で食べちゃうからお出しするのはレアなんです」


いたずらっぽく笑いながら店主...ゆきさんは菜箸で田作りをつまんでいた。


「あ」

「...味見です」

「はは、提供してからつまんでたら、味見というよりつまみ食いですよ」

「へへ、ばれちゃいましたか」


そんなたわいない話をして、のんびりといい食事ができた。ナルトも大満足のようだ。会計をして、値段の安さに驚いて、思わずいいんですかとたずねてしまう。


「初回おまけです。また、いらしてくださいね」



暖簾をくぐりながら、店主の柔らかい笑顔に迎えられるのを想像して少しばかり胸が温かくなる。


「ヤマト隊長、なーにニヤけてるんだってばよ?ゆきねーちゃんに惚れちゃったのか、にししっ」

「なっ、何を言ってるんだ君は。う、春といえど外はまだ寒いなあ」


ナルトのからかいの声と通りに吹いた少し冷たい春風が、小さく生まれた温かみを攫っていった。



さて、次の任務もがんばっちゃいますか。

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