銀魂 攘夷

□放課後の坂田くん
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「どうってことないならー...」

「そー。いいのいいの。それより糖分不足なんだわ。明日のおやつ何?てゆーか今日のおやつ俺の分とってある?」



いち早く話題を変えたい気分だった。食いついてくるであろう菓子の話を始めれば、話を逸らししたなと笑われる。気がついても言うんじゃねーよ、可愛くねー奴。



「あしたはお汁粉かなぁ...昨日あんこ沢山使ったから残りが少ないの。お汁粉なら量が増やせるでしょ」

「ふーん」



夜風が桜の木をざわざわとならす。
その音に耳を澄ますように、しばらく沈黙が続いた。

そこへ、ぎゅう、と腹の虫が鳴く。



「なあ、そろそろ...ゆき?」

「あ、はい。どうしました?」

「お前がどうしたんだよ、空なんか睨みつけて」

「春の大三角形が」

「何ソレ」



聞いてしまったが最後、ゆきは楽しそうに聴きなれない星の名前を口にする。

聞き覚えがあるのは北斗七星ぐらいだ。おおぐま座のしっぽの先にあるのと、おとめ座としし座の明るい星を繋ぐのだと。



「そんなに星の名前覚えててどーすんの」

「空見るのが楽しくなるの。雲の形もそう。ぼんやり見るのもいいけど...なんていうかな」



うまい例えを探そうと、うーんと唸って、ああでもないこうでもないと思案している。



「その他大勢のなかに名前を知ってる人が居ると他より特別になるでしょ、地図でしか知らない場所に知ってる人がいるってだけで親近感湧くでしょ、ええとね」

「あーもー分かったわかった。要するに情が湧くんだろ」

「そうそう!」



すっきりした、とゆき。その満面の笑み越しに、辰馬が見えた。このやかましいのを引き取ってもらうか...



「おーい、こっちだ」

「銀時!そこにおったんか。ゆき知らんか?風邪ひいとるんに、おまんを探しに出掛けてから戻ってこん...」

「ここに居るぜ、煩いのなんの。それに風邪っぴき?うつされちゃたまんねーよ、さっさと引き取ってくれ」

「わ、酷いこと言う。じゃあ養生して明日のおやつ作るのお休みしよっと」

「今晩はよく寝て、明日には元気になれよ」



ゆきはくすくすと笑いながら梯子を降りていく。
銀時は戻らないのかと辰馬に聞かれるが、もう少ししてからと伝えた。



2人が部屋に戻っていく。

戸が閉まると、プツンと糸が切れたように夜空が静かになった。



寝転がっていつものように天を眺める。

本当はただ眺めるだけがよかったのに、あいつのせいだ。名前を知った星ばかりに目がいく。

ゆきの声が星の名前を呼ぶ。



「ここに居なくてもうるせーのかよ」



情なんて、湧かすもんじゃないのにな。


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