銀魂 攘夷
□隣の席の高杉くん
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外へ出ると、泥や傷まみれの仲間たちが、今回は勝ち戦だと知らせてくれた。
ゆきはすれ違うたび、おかえり、身体は大丈夫かと声を掛ける。そうして待てど、探さんとする人の姿は見えない。
寺の門をくぐり、階段の下を見れば、俯きゆっくりと上ってくる人影があった。
慌てて駆け降りると、その足音に男が顔をあげる。
「晋助」
「...んなとこ走ってたら滑るぞ」
「だって、ひどい怪我」
「大したことねーよ」
腕の傷に手を伸ばすゆき。
高杉の服から錆や火薬臭がした。
故郷の家族は砂糖やもち米を炊いた優しい匂いだった。花屋の友人なんて、いつも淡い芳香をほのめかせていた。火薬の臭いは夏に花火をした時ぐらいだとぼんやりと思う。
「帰ったら、お風呂?ご飯?」
「寝るさ」
「そっか。せめて着替えをしてね、みんなの分洗ってるから」
「めんどくせえよ」
「晋助は石鹸の匂いのほうがいい」
「...さっきからお前、」
ただでさえ戦終わりで血が沸き立っているのを、身体に触れられ、ダメ押しの殺し文句ときた。
誘っているのかと出かけた言葉を呑み込み、傷の近くに添えられた手をそっと払う。
「何でもない。とっとと帰るぞ」
高杉は追い抜くように足を進める。ゆきは頷き、後をついて行った。