銀魂 攘夷
□隣の席の高杉くん
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翌日の明け方。桂と辰馬が勢を引き連れ、アジトへ帰ってきた。
「疲れたのーはよう寝たい」
「ああ。その前にゆきの無事を確認しよう」
「大丈夫じゃろうて。高杉のやつが念押ししとったきに」
「だが...いつもの感じならお帰りと出迎えてくれそうなものだが...」
そう言われてみれば、と辰馬も薄暗い室内を見渡す。姿もなければ、走ってくる気配もない。
本堂を見れば、仏像の前でゆきがうずくまっていた。2人は慌てて駆け寄り、その肩を揺する。
「おい!ゆき、ゆき殿」
ゆきはうう、と唸り、ゆっくりと目を開けた。辰馬が何かあったのかと問う。
「うっかり寝ちゃったの、う、寒い。...お帰りなさい、よかった、無事だったのね」
「ああ、仲間もみんな無事じゃ。わしもほれ、ピンピンしちょるぞ。服にちょっと泥がついたぐらいで」
「俺も怪我はないぞ、泥もついてないぞ」
「ヅラそりゃさすがに嘘じゃろうが」
いつものようなやり取りに、ゆきがふふ、と笑みを溢す。
「まったく、こんなところで寝落ちるとは、ゆき殿一体何を...」
桂が呆れたように言う。ふと仏像の方を見れば、山積みの饅頭が供えられていた。線香もまだ少しばかり煙っている。
「まさかとは思うが...夜通し手を合わせていたのか?」
「へへ、途中で寝ちゃったから夜通しではないのだけどね」
「風邪ひいたらどうすんじゃ、無茶するのー」
「風邪くらいどうってことないよ。皆が無事なら...ね」
笑っていたゆきの表情が、ふと固まる。戸の向こうを見るようにしながら、高杉と銀時の所在を訊ねた。
「ああ、アイツらなら後から来るぞ。だが今はー...会いに行くなら後のほうが」
「怪我してるの?」
「アイツらなら屁でもない程度だ...っていうかその怪我は、あ、ゆき、ちょ、話は最後まで聞きなさい」
「お母さんごめんなさい!」
「待ちなさい!ってゆーかお母さんじゃない、桂だ」
話も半ばに、ゆきは外へ駆けて行った。