銀魂 攘夷
□隣の席の高杉くん
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「今日は寺の外に出るな」
朝食を食べ終わるなり、高杉が言った。食後のお茶を注いでいたゆきの手が止まる。
「どうして?」
「戦だ」
分かった、と承知の返事を返すも、その顔は不安そうだった。すると、いつもの調子で辰馬が大丈夫だと笑う。
「なあにも心配する事はない、死ぬ気で寺には戦火は及ばんようにするぜよ、高杉が」
「俺かよ。」
「死ぬ気ってなあ...お前らはいつも無茶をしすぎだ。あ、茶といえば、ゆき、お茶が溢れてるぞ」
「あ、ああ」
ゆきは慌てて片付けて、また茶を淹れ直す。皆が一服し終わると、んじゃ行くか、と銀時が立ち上がった。
「おい銀時、出かける前に歯を磨きなさい」
「お母さんかよ」
銀時に続き、桂と辰馬が立ち上がる。
「ん、高杉どうかしたか」
「先、行ってろ」
「ああ。総督が遅刻するんじゃないぞ」
3人が外へ出たころ、高杉がゆきに訊く。
「怖いか」
「怖い...のかな。わかんない。私は戦を知らないから」
「ならその方がいいだろ、知らぬが仏だ」
「...ここには仏様がいらっしゃるから大丈夫かな」
「誰も手を合わせちゃいねーだろ。こんな時だけ都合よく助けるほど優しかねえさ。だから大人しく身を隠すんだな」
「分かったよ。...実は私毎日お供物してるのよ。お昼には銀時が食べちゃってるけど」
「は、罰あたりな奴」
じゃあ俺も行く、と高杉が立ち上がる。
すると、ツンと服の裾が引っ張られた。
何かと思い振り向けば、裾を掴んだゆきが真っ直ぐに高杉を見ていた。
「...死んじゃだめだよ、誰も」
「そう簡単におっ死なねーよ」
「難しくっても死なないで」
「どーいう言い回しだよ」
とにかく大丈夫だと、高杉はゆきの頭に手を当て、自身の胸に引き寄せた。その手は下へ滑り、背中をあたため、離れる。
それからは、しんとした広間にひたりと高杉の足音が響くだけだった。