銀魂 攘夷

□銀時
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結局梯子は見つからず、塀をつたってよじ登った。ゆきは案外鈍臭かった。
俺一人なら一瞬なのを、助けてだの落ちるだのやかましくて何度も手を引いた。



「お前、サバイバルしてたらとっくにおっ死んでたんじゃねーの」

「そ、そうかも...」



一息つき、ゆきと並んで横になる。

寝転がった途端、目の前の空を白い光が横切った。



「あ、さっそく」

「結構流れてくな」



会話はしばらくそれきりだった。

星が降るとはこのことか。次から次へと流れるのを眺めた。

時折、饅頭饅頭、と声に出さず願ってみるも、3回にはなかなか行きつかない。
こんなにたくさん流れても言い切れなかった。お星さんも結構ケチなもんだ。



少し身体が冷えてきた頃、漸くゆきが口を開く。



「...銀時さんもおセンチ?」

「おセンチっつーかおしっこ行きてーな。身体が冷えた」

「じゃあそろそろ戻りましょうか」

「そーだな。お」



これまでで一番の流れ星が流れる。

それは細く長く流れ、願い事がしっかり3回言えそうなほどのものだった。



「やっと3回言えたかも」

「お前本気で願い事唱えてたの」

「せっかくなら、と思って」

「仏さんがそこにいんのに」

「ああ、ほんとだ。銀時さんはお願い事しなかったんですか」

「饅頭ぐらいはな」



明日には叶いますよ、と笑う。
願うまでもなく、隣に和菓子屋がいたってか。



「んじゃこれは叶えてくれっかな。俺だけよそよそしく“銀時さん”って呼ぶのやめて欲しいですっつうのは」

「...3回唱えられたら」

「おいおい、お星様じゃなくて和菓子屋さんなら叶えてくれるだろーが。それとも和菓子屋も3回言わねーとだめか?んな店潰れちまうだろ」



またくすくすと笑い、じゃあ、と少し照れ臭そうに言った。



「銀時」



なんてことない、皆がそう呼んでいるのに、どうもこそばゆかった。
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