銀魂 攘夷
□晋助
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「なんじゃあコリャ?!」
今朝の目覚ましはそれだった。
寝床の襖を開け、呆然と境内の方を眺める辰馬。
そこには紐が張られ、大量の俺たちの服が干されていた。戸という戸は全開、風が洗濯物を揺らしていた。
その犯人の姿を探すも、屋内にはいなかった。
外へ出てみると、ヅラとゆきが箒で石畳みを掃きながら談笑している。
「お早う、よく眠れたか」
「眠れてねーよいつもより1時間も早く起こされちまったじゃねーか」
「しょうがなかろう、あんなとこに干しとるんじゃき」
「すみません、驚かせて。外に男物の着物を沢山干したらアジトに目をつけられてはいけないので」
「ほー」
「そんなことより腹減ったな」
「今ごはん蒸らしてるところだが、そろそろだな。そうだゆき、高杉を呼んできてくれんか」
そう言ってヅラは高杉の居場所を伝える。
ゆきは頷くと、高杉がいつも素振りをしているところへ駆けて行った。
配膳が済んだところで2人が戻ってきた。
だいぶ打ち解けたのか話しながら歩いている。
つーか高杉と何話すんだ。
「おせーぞ、冷めちまう」
「すみません」
「よし、それじゃあ、いただきまーす」
ゆきが来たせいか、本当に修学旅行みたいだ。一斉に寝床について一斉に合掌をして、こんなことは滅多にない。
まあ、飯はいつも通りだが。
「それでね、晋助。文を出したいのだけど」
「文?故郷へか」
「うん。この辺に飛脚があったら教えてほしいの」
「それなら通りの方にある」
味噌汁を一口飲んだゆきがそう高杉に尋ねた。
2人の会話を聞いて、ヅラと辰馬が狼狽える。
「え、ちょ、晋助ってだれじゃ」
「俺だ知らねーのか」
「しっちょるわい、ほじゃがなんで晋助なんじゃ」
「知ってるなら聞くな」
「そうだ高杉貴様、たった一晩でゆきとそういう感じになったのか?!お父さんは認めんぞ」
「昨日お母さんだっただろどっちかにしろよ。つーか何もねぇよ、もう黙ってろや」
「そうそう、何事もないです。そう呼んでって言われただけで」
ゆきがたくあんを齧りながらあまりにも平然と言ってのけるので、すぐに騒ぎは収束した。代わりに、へぇ〜とか、ふぅ〜んと2人はニヤついていた。
俺は甘めに味つけられた菜の花の胡麻和えを頬張りながら、ちょっとした疑問を投げかける。
「文を出すっつって、お前、金ねぇだろ」
「それは着払いで。確かに、無一文ですけどね」
「ふうん。行くんなら晋助くんでも連れてけよ。お前あんまり外プラプラ歩いてっと女衒にまた引っ捕まるかもしれねーからな」
「はい。...晋助くん、一緒にいってくれるかな」
「晋助くんじゃねーよ、それに俺は今日、敵陣の偵察がある」
「そこは“いいともー!“じゃろうが!それにしても残念じゃの晋助くん、デートができんで。代わりにワシがついてってやる、飯を終えたら文の支度をしちょきー」
“晋助“いじりに“デート“ときて高杉の顔はどんどん険しくなる。一方ゆきは、心配しているであろう両親に無事と真実を知らせられると、喜色満面だった。