銀魂 攘夷
□誰が貸すやら
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「風呂はここ。俺は水浴びばっかだがな」
「だれか使ってるのね。きれい」
「高杉ぐれえなんじゃねえの。んじゃあこれで終い、飯つくんの手伝えよ」
「はい!ありがとうございました」
浜辺での不安げな顔はもうないようだ。にこにこと廊下を歩き、ゆきはヅラたちのところへ向かって行った。さて、俺は飯ができるまで寝とくかな...
しばらくするとゆきの笑い声も混じって賑やかな声がしてきた。ほとんど聞こえて来るのは辰馬の声だが。
「おーい銀時くーんご飯ですよ」
「...お前はお母さんか」
「お母さんじゃない桂よ」
語尾がお母さんじゃねーか。そうツッコミながら並べられた夕飯の前に座る。
「お、何今日、天ぷらがあんの」
「ゆきが草取ってきてのー美味いちゅうて、天ぷらにしたんじゃ」
「草」
ビワの葉の新芽だとゆきが補足をする。ふうんと適当に返事をして箸をすすめた。
「もちもちして美味いな、俺は気に入ったぞ」
「へへ、よかったです」
「ヨモギとってたんはどうするんじゃ」
「乾かしてお風呂に入れるといいんですよ、怪我の治りが良くなります」
「はは、わしらにぴったりじゃの」
「辰馬お前水浴びしかしねえだろ」
「わっはっはそうじゃったな」
「蕎麦飛んできたぞ汚ねぇな」
高杉の着物に辰馬の口からでた蕎麦が付く。俺じゃなくてよかった。それを隣で見たゆきが、あわてて布巾で拭い取った。その高杉は黙りこくっている。ぷぷ、照れてやんの
「...あ、そうだ、高杉さん。お風呂のお湯、どこから取ってますか。湧き水が出てたのを窓から見えたのだけど、」
「俺もそこから使う」
「そうだな、もう少し下に流れついてるから、バケツがあるから汲み入れるといいぞ。だがゆき殿、今から入れるのはなかなか骨が折れるぞ」
「竹で水路作って、窓から」
「は、そりゃいいな」
「お前ほんとにサバイバルでも生きてけそーだな」
「お、追い出さないでくださいよ?でも、いつまでもお世話になるわけにはいかないですもんね、どうやって帰るかも考えないと」
「まあまあゆき!いつぶりかやっと気を抜いて休めるんじゃろう、明日にしたらどうじゃ」
辰馬の言葉を聞いて、はっとした顔になる。
そしてああ、と息を溢す。
朝まで寝てもいいんだ、と。
逃げるタイミングをずっと探っていたのだろう。ゆきの顔は、ひどく安堵した顔だった。