銀魂 攘夷
□誰が正義やら
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そうこうしているうちに、風が強くなり波も高くなってきた。それに皆気がつき、水切り大会はおのずと閉会の流れとなった。
「そろそろアジトへ戻るか」
「腹も減ってきたしな、蕎麦でも茹でよう」
「じゃー嘘ついたヅラが夕飯当番な」
俺と辰馬は浜を後にして林の方へ歩き始める。ヅラは俺は嘘ついてないぞ!ついてない、ついてなんか...としょんぼりして後ろをついてくる。
「なんじゃ、高杉ィ。おまん帰らんがか?釣りでもするんか。まあ確かに満ち潮に向かう時間じゃの」
そう言った辰馬に、高杉は無言の渋い顔をして返してみせた。その横には、不安げな顔のゆきが突っ立っていた。
「だァからゆきちゃんよ、逃げた後のこと考えとかねーと」
「...向こうの岩場に雨風が凌そうなところが見えたの」
「満潮で浸かるんじゃねえの」
「それはフジツボの位置とかで確認して」
ダメだったらと念押しをする。すると、林に使われてなさそうな倉庫があったと言う。走って逃げながら確認したのか。ちゃっかりしてんじゃねーか。
「ムカデとか蜂の巣とか」
「ああ!それは嫌です、なんとか見える行って駆除しないと」
「飯は」
「素潜り得意なんです、農具で代わりになるかなあ。この辺、タコが居そう」
「かっわいくねー奴。黄金伝説じゃねーんだからお前さあ」
「急いで見てきます!いろいろ」
そう言ってゆきは岩場の方に駆けて行く。その顔は何故だか楽しそうで、サバイバルしてみたかったと言わんばかりだ。少ししてうるさい奴らがやいやい言い始めた。
「...銀時、おまんまっこと素直じゃないの。心配なら一緒に帰ればいいじゃろう」
「はあ?そこまで面倒見てやる義理はねーよ。泊めてくれっつーんなら考えるけどな」
「助けた後のこと何も考えてなかったのは銀時、貴様のほうなんじゃないか」
「ほうじゃほうじゃ!そのまま遊女ならせめて寝食は困らんかったろうに」
「じゃあ見過ごせってのか?アイツは近所の悪ダヌキに嵌められて売り飛ばされたんだ。親兄妹も知らん間に」
「家族も知らぬ間に寂れた林や海辺でのたれ死ぬのとどっちがよかったんだろうな」
ぐ、と押し黙ってしまう。くそ、てめーらに偉そうに言われる筋合いはねーってのに。どう返してやろうか頭を捻っていたところに、砂浜を蹴る音が聞こえてきた。ゆきは嬉しそうに結果を述べる。
「っはあ、はあ。寝泊まりできそうでした!」
「...よかったじゃねーか」
「はい。潮は大丈夫そう、ほかに人がいた痕跡も無いし、次は倉庫の方覗いてくる...」
そう言ってまた忙しく林の方に向かおうとするゆきの手を、高杉が掴んだ。
「行くぞ」
「あ、ありがとうございます。虫苦手で」
「そっちじゃねぇ」
名を呼んで止めようとするも、振り向きもしない。高杉はゆきの手を引いて海辺を後にしていく。
ヅラと辰馬はやれやれと笑いながら2人の後を追う。
「おい、勝手なことしてんじゃねーよ!」
「勝手に助けたのはてめーだ」
「...チッ」
いよいよ何も言えなくなった俺は、4人の後をのらりくらりとついて歩いた。