銀魂
□コイゴコロ
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「ふはー、ほっぺが痛い」
「まあそうなるだろうな」
玄関前で、沖田さんの到着を待つ。間も無くして、いつもの袴に着替えた彼が現れた。
「お待たせしやした、ってなんでテメーがいるんでィ」
「まあ、見送りだ」
「ささ、ゆきさん行きやしょう」
「スルーかよ」
草履を履いた沖田さんは私の手を取って、先へと促す。
「...総悟、無礼講だっつって酒は飲むなよ。誕生日過ぎたっつってもサザエさん方式だからな」
「あはは、おねーさんがついてるから大丈夫ですよ。コーラだもんね、沖田さん」
「...俺の姉上はもっと美人で上品でさァ。声あげてあははなんてアホみてーに笑わねェし」
あ、
「...沖田さん、」
大事なお姉さんがいるのに、ごめんなさい。
そう伝えようとしたら、
“ゆきさんは何にも分かっちゃいねェ”
グイと手を引かれて沖田さんと対面した。
それも、至近距離で。
「俺にとってもゆきさんは女だ。姉上でもねェ。まして俺は弟でもねェ、男だ」
“そうだろィ、土方さん”
そう言ってニヒルに笑った美少年の顔は、グングンと近づいてくる。
逃げようにも、いつのまにか身体は抱き竦められていて逃げられない。
いつもニヒルな土方さんに助けを求めて目配せしても、唖然としているだけだった。ウブなのは本当だったようだ。
「ちょちょちょーーっと待った沖田さん」
「待ったなし」
「タンマ」
“タンマもなし”
その声は妙に生々しくて、温い感触が耳にあった。それでやっと唇が触れていることに気がつく。
音はなく、耳から頬へと感触は移動する。その度に背筋がピリリと強張っていく。
やめて、と言いたくても、ちゃんと言える気がしない。腕に力を入れても、焼け石に水。
目を瞑り、歯を食いしばって耐えるしかなかった。
からかうにもやり過ぎだよ沖田さんー...!
「っ...!総悟てめェ」
「いけませんんんんんんん!!!!!!」
やっと土方さんが制止の声を掛けてくれたとほっとした瞬間、べりっと私達は引き剥がされた。
「ムラムラはハタチになってからです!!」