銀魂
□女と仕事、男と煙草
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「廊下の雑巾掛けは俺に任せて。玄関やっておいでよ」
そう言って大変な雑巾掛けを請け負ってくれた山崎さん。おっとこまえ!って言うと、照れて逃げるように水を汲みに行ってしまった。C-Boy(32)というやつか。
さて、私の仕事は。
電球の埃を取って、塵を掃いて、歯ブラシでサッシのゴミを掻き出し、雑巾で全てを拭きあげる。靴箱の中まで、ピカピカに。
ついでに近藤さんの革靴を磨くことにした。
玄関の段差に座って、キュッキュと小気味良い音を立てる。
「おい、」
キュッ、キュ、
「ゆき、」
キュ、
「わああ、あ、土方さん」
後ろから屈み込むように顔を覗き込まれる。切れ長の目とばっちり目があった。背後から現れるもんだから、心拍数は最大値。
「なんだ、エラく集中してるな。それとも耳栓でもしてんのか?」
「鼻栓とマスクならしてますけどー、」
「女がなんつーもん着けてんだ。あーソレ近藤さんのか」
「あはは、察しちゃいましたね」
土方さんのも今度、といいかけてあわてて言葉を飲み込む。
「なんだ?」
「ひ、土方さんはお出かけですか?」
「まあそんなとこだ」
そういって、革靴を履き、段差のところに座り込んだ。
「お出かけは?」
「玄関までのな」
「いわゆるサボりですね」
言うようになりやがって、と小突かれそうになる。咄嗟に避けた肩。
「...あ、スミマセン」
「いや...悪ィ」
土方さんは懐に手を入れた後、立ち上がった。出先を聞こうにも、声は咄嗟には出ない。
「...タバコ」
そうして戸が閉まる。
ぽつん、とその一言と私だけがおいてけぼりになったようだった。