銀魂
□女と仕事、男と煙草
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山崎さんがフリーズしてから復活までに約5分。
ちょうど並んでたのが終さんで、ジッと、そのうちZっと待つもんだから大行列。
ブーイングを治めるのが今日1疲れたかもしれない。
「っはあ〜。きもちい...」
ここは個人用の檜風呂。
1人用にしては少し広い造り。なんと、要人用のものらしい。
くたくたになったわたしを見て、こっそり山崎さんが沸かしてくれていた。
念のため、局長の許可ももらっているそうで。なんてデキる男なの...
今日だけで彼の株は急上昇。いつも失礼なことをかましてきたのとは打って変わって。女中にスカウトしたいくらいだ。
浴槽のふちに身体を預けて、深呼吸。
檜のいい香りを身体中に巡らせた。
そうしてしばらく癒されていると、
ドンドン!
と戸が荒く叩かれた。
「誰か使ってんのか?ここは要人用だ」
土方さんだ。返事をしようにも、喉のあたりで突っかかってしまう。
「おい、誰だっつってん...」
「あ!の、私です」
「ゆき?」
「はい」
それっきり、土方さんの返事はなかった。
普段なら、”何かあったのか”とか”男世帯で風呂なんざ”とか言われちゃいそうなのに。
ほっとしたような、物寂しいような。
身体の空気を全部抜くように、ゆっくり域をはく。
そうして、ぶくぶくと頭まで湯に沈む。
そういえば蓮ちゃん体調どうなっただろう。
良くなってるといいな。
薬、もらったかな。
...あ、のぼせそう
あわてて湯船から上がる。
ロッカーに置いていた、予備の作業着に着替える。小袖も置いておこうかなあなんて図々しいことを考えながら。
支度が終わり、お風呂場をあとにする。
戸を引くと、ふわりと慣れた匂いがした。
「土方さん...?」
けれどそこに姿はなく、縁側の麓に煙草の吸殻が落ちていた。まだ少し燻っている。
「もう、火事になったらどうするの...」
そう言いつつも、頬が緩む。
いつもなら踏ん付けて火消しをするのだれけど。優しさと心配がそのままそこにある気がして、どうにもできなかった。
彼もこうしていたのだろうか。
縁側に腰掛け、夜風に当たることにした。
煙草の火が消えるまで、ゆっくりと。