銀魂

□女と仕事、男と煙草
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勝っていたゲームを、気にくわない、と沖田さんに電源を切られたような感覚。

いや...

賑やかだったバラエティ番組を、プツンと切った後のような感覚。

...どちらにしろ、私は色気のある表現ができないようだ。靴を磨く音がやけに耳につき、居心地の悪さもあって、いつもより手早く終わらせた。

山崎さんのところへ向かう途中、客間で休んでいる蓮ちゃんの様子見ることにした。

そろりと戸をあけ、声をかける。


「調子はどう?」

「お水とって...」


パイプベッドの横のテーブルに、ミネラルウォーターが置いてあった。


「絶不調だねえ、はい、」

「キャップ外して...」

「しょうがないなあ」

「ん...ありがと、助かったよ」


薬は飲んだか尋ねると、土方さんが買いに出てくれたのだという。


「そっか、」


タバコじゃないんだ。胸がチクリとする。

と同時に、彼女が羨ましくなってしまう。甘え上手で、自分の思うところに素直で。それでもって彼女ならと許されていて。いつも周りに人がいて、一際華やかな存在。

一方私は、よく言えば縁の下の力持ち。いつのまにか人の仕事をも担って、人知れずせかせか動く働き虫だ。


「昨日はね、仕事、辞めたくなったからヤケ酒」


水をちびりと飲みながら、彼女は続けた。


「けど女中の仕事は好きなの。お洗濯好きだし。それならクリーニング店でもいいんだけどね、ほら、私、女の人ばかりのところでうまくやっていけないから。」


“それに、会えなくなっちゃうから”


一番小さく呟いたそれが、一番の理由。

彼女の目が、判るでしょ?と私の目を捕らえる。堪らず、私は視線を下に降ろした。


「...元気になったら、洗濯がんばるんだよ」


私の意外な返事だったのだろう。大きな目が一層大きくなっている。


「応援、してくれないんだ...」

「今日、貴方が休んだ分の仕事は山崎さんが手伝ってくれてる。山崎さんに手伝うよう言ってくれたのは土方さんだよ」

「どういうこと?」

「お礼、忘れずにね。男の世界も女の世界も、仕事は筋通さなきゃ」

「公私混同はだめだもんね」

「うーん。気持ちは大事にしたらいんだよ。けど、職場恋愛ならそれ以上に仕事も大事にしないと顰蹙買うからね。あと上辺女はモテないよ」

「モテな...って、ゆきちゃんがソレ言う?」

「あはは、失礼なやつめ」


“ゆきちゃーん?雑巾掛けすんだよ”

絶妙なタイミングで、山崎さんに呼ばれた。
先輩こと私からの説教は終了だ。

もしかして、タイミング見計らってたかな。
話を聞かれたことよりも気遣いへの感謝が大きい。

戸を開けてお礼を述べると、合ってただろってドヤ顔な山崎さんなのだった。
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