銀魂
□知りたるも仏
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「あ?年休?」
「蓮ちゃん体調悪いみたいで。帰るのもしんどそうだから客間で休んでいます」
原田さんが土方さんに言うのもどうもおかしい。というわけで、同じ女中の私が土方さんのところへ言いに来たのだ。
「仕事回るか?」
「いえ。隊士さんでお手すきの方がいらっしゃれば」
「山崎にでも頼んでくれるか。...年休は理由を問わねえからな、まあしょうがねえか」
「そう言って頂けると蓮ちゃんも休みやすいです」
おう、と言いながらタバコに火をつける土方さん。ふ、と煙を吐きながら副長印を押してくれた。
「ありがとうございます、助かります」
とりあえず彼女へのお咎めは無しで済んだ。
さて、山崎さん探しに出発!
... なんて呑気なことはしておられず、洗濯機まで走ってスイッチを入れ、朝食のお皿を洗いに台所へ。
手洗いしてる暇なんてないから、滅多に使わない食洗機につっこんだ。
「さて、次は、」
「ゆきちゃん、慌ただしく動いてるなー。大丈夫?手伝うよ」
「山崎さんんん!」
「副長から聞いたよ。遠慮せず言ってよ手伝うんだからさ」
「山崎さん探す暇もなく...へへ」
「もー。米研ぐの?15合くらいでいい?」
そう言って米びつの蓋を開ける救世主。ああ、なんて有り難いの。
2人になれば、いつものペース。呑気な話をする時間もできて、ほっと力が抜ける。
「懐かしいな、ゆきちゃんが来る前は隊士たちも炊飯当番やってたんだよ」
「あ、近藤さんから聞いたことあります。仕事に稽古に家事なんて、体育会系の寮みたい」
「はは、ムサい感じはそのまんまだよ、きっと」
山崎さんはてきぱきと手際が良くて、牛蒡の笹掻という地味〜な下拵えも完璧にこなしてくれた。ちなみに今日のお昼定食は牛肉と牛蒡の柳川煮。
「山崎さんはいい奥さんになれますね」
「満面の笑みで言われても。俺、オトコ」
「あ」
あまりにもエプロン姿がナチュラルだから性別なんて気にしてなかった。やっちまった。
「え、もしかして俺おかまと思われてる?たしかに女装もするし肌には気をつけてるけど」
「そうは思ってないですよ。エプロン姿がしっくりきすぎてて」
「なんだ、よかった...ん、いいのか?」
「いいんじゃないですか、最近は料理もできる自立した男性ってイイみたいです。主夫といいますか」
「ゆきちゃんはそこんとこどう思う?」
「そうね、そんな人が蓮ちゃんの彼氏になって料理を教えてあげてほしいな」
“ま、そうくるよね””大体予想はついてた”とぶつぶつ独り言を言いはじめる横の彼。会話のキャッチボールは投げ返されずに終わってしまったようだ。
ま、お昼の支度が捗るからいっか。