銀魂
□ブラックはほどほどに
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「そろそろ休憩するかい。看板娘が増えて大繁盛だよ、ゆき。」
そうこうしているうちに、だいぶ時間が経っていたようだ。休憩を促そうとお登勢さんが声をかけてくれた。
「ありがとうございます。でも看板女将にはかなわないです」
「はは、やめておくれよ、そんなお世辞。その反面どうだいこの男は、ずっと居座って呑んでやがるのさ。外で働いてきたらどうなんだ」
「っるせーな、金払うからいーだろ」
「銀さん、お冷もらう?」
「いらね」
あ、そう。ばっさり断られて、感じ悪いなと思った矢先、団体のお客さん。あわてておしぼりを人数分かかえて仕事に戻った。
「...そんなに気にしてカリカリするんなら連れて来なきゃ良かっただろうに」
「イイ歳コイテ焼キモチカヨ。ショーモナイ男ダナ!」
「そうそう。ったく、ろくにデートにも誘えないってのかい」
「てめーが縁がねえからって人のこと好き勝手に言いやがって。これだから年増女供は」
「ほら、言った先から。客に殺気向けるんじゃないよ」
団体さんは2次会での利用みたいだ。
かなりお酒が回っているようで、わいわいどんちゃん騒ぎ。
彼氏がいるのか何時ころ仕事がおわるか質問責め。お酒のペースも速い。
店内をくるくる回るかのように働いた。
「ふぅ...、お待たせしました、生6つです」
「ちょっとおねぇちゃん聞いてやってよー、コイツさ彼女に二股かけられてたんだよ」
「あらま、お気の毒に」
「俺も二股かけてやろってんで女の子探してたんだけどさ、おねーさん相手してくれません?ほんと」
ガタッ
「あはは、私も捨てたもんじゃないですかね...! 痛、」
「あ、彼氏さんでしたか。スンマセン」
「銀さん...」
「銀時な」
突然二の腕をギリリと掴まれ、振り向くと不機嫌極まりない彼。
あまりの負のオーラに何も言えず、そのまま玄関口のほうへ引き摺られていく。
「悪いな、ババァ。今日の勤務はここまでっつーことで」
「銀さん、何を言って、いてて」
給料はまた取りに来な、というお登勢さんに、なんとか返事をしたところで、ぴしゃりと戸が閉められた。
やっと腕を離してもらうも、むこうを向いて振り向かない。
彼の背中と、外の空気は冷ややかだった。