銀魂
□残業手当て
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うげえ。
ガラと副長室の戸を引くと、相変わらず、むわっと煙草の匂い。それはもう慣れたのでいいとして、
「どうしたんですか、この書類の量」
「...暫く前にドンパチやった分をとっつぁんが送ってきやがった」
「あはは...自業自得といいますか、」
「ちゃんと浪士しょっぴいたんだ、こりゃ公務と胸張って言えるぞ」
「じゃあ残業手当期待してます」
「おう、現物支給だけどな」
「現物...? あの、冗談ですよ?」
"やるか。"と文机に向かう土方さん。おう、と軽く返事しちゃってるけれど、普段お世話になっている分、手当なんて頂けない。
「あの、土方さーん」
「ゆきは総悟の始末書を片付けてくれ。そんなに量はねえから、っつても20枚ぐれぇあるか...」
「ふふ、充分少ないですよ」
目の前の書類を少しでも減らすことが先決。ようし、と襷掛けをして、定位置の彼の左側に膝をつく。
"おい、それ..."ぼそっと隣から呆れた声がした。
久しぶりに綺麗に着付けたけれど、しっとりしているのなんて性に合わないんだもの。
「20枚じゃ物足りないんだから、どんどん回してくださいね」
「無理すんなよ」
ぽんと頭をはたき、労いの言葉。
やっぱり今日は少し優しい。
恥ずかしくて、なにようと睨んでみようと振り向くと、細められた目と目が合った。
自分でも聞き慣れない布ずれの音を立てながら、そそくさと彼の右側に座る。
「ゆき、そっちでいいのか」
「なんだか今は、いつもの位置だとダメなんです、右利きだから。」
右利きだから、字が震えて困るから。
「ふーん?」
どうしよう、左肩がくすぐったいなあ。