銀魂
□pm
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ありえねーから、マジでありえねーから。
隣で銀時が何やらブツブツ言っている。
「しょうがないのー、逃げられなかったから倒すしかなかったんだもの」
「みつを、じゃねんだよコノヤロー。銀さんがいただろーが、頼りなさい。」
「師匠にいいとこ見せたくって」
「全くこの子は」
ヤレヤレと飽きられてしまう。腕を掴まれ逃げれなくなった私は、とっさに浪士の鳩尾にグーパンをお見舞いした。
無理すんじゃねーよ、って頭を小突かれる。
昔馴染みの顔と声に、緊張気味の肩と脚がスッと軽くなった。
「で、そのケーキは万事屋さんにだって?」
「何だかんだ、ちょっと怖かったんだな...」
「ん?」
「ケーキは、嘘なの。お妙さんを通じて食べてくださいね。」
「おいおい、ストーカー助長する気かよ。つーかゆきちゃんよ、俺んとこじゃなかったらどこ行くんだ?珍しい格好して
まさか男か、男なのか?!許さねーぞ銀さんはぁあ!!!」
「ふふ、そんなまさか。ここだよ、銀さん、送ってくれてありがとう」
「....」
見慣れた真選組屯所。銀さんは原付を手押しで門の前まで一緒に歩いてくれた。
乗っけてやるよと申し出てくれたけれど、お巡りさんのところにノーヘル二人乗りなんてしょっぴかれに行くようなもの、やんわりとお断りさせてもらったのだ。
目的地がここだとはあえて伝えなかったのだけど。犬猿の仲の真選組に送ってもらうなんて、怒っちゃったかな。
「...今からは書類手伝いのお仕事なの、あはは」
「言われんでもこんな時間にここに来るんだ、そうだと分からァ...」
彼は閉まったままの門、その向こうを睨みつけるように目線を流した。
ふとタバコの匂いが鼻を掠めた。と同時に、ギギ...と門が開かれる。
「ゆき、遅ェ」
「ごめんなさい、あの、」
「言わなくていい、来るまでのことはな」
銀時がボソリと言う。
「でも、」
「...またなんかあればいつでも俺んとこ来な。な?」
彼にも考えがあるのだろう、素直に、分かったとだけ言い、また彼の厚意に礼を述べた。
「ありがと、銀さん。またお菓子作ったときは持っていきますね」
「おう」
そういうと、歌舞伎町へと向きを変える。
ひょいと手を上げて解散の合図。
「お待たせしてすみません、土方さん。ばりばり頑張っちゃいますね!」
「頼もしいもんだな」
煙草の煙に引かれて門をくぐる。
ちらと振り向いたら、会釈する門番の隊士さん。
空には夕暮れ空の、紺と黄の境目がぼんやり白んでいるところ、そこにするりと溶け込むように、銀髪の彼は行ってしまっていた。
これから夜の一仕事。
明日晴れたら、歌舞伎町に遊びに行こう。