銀魂

□am
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「朝っぱらから煩えな」

「朝っぱらから酸っぺえ臭い撒き散らしてんじゃねえや死ね土方」

「朝っぱらから物騒なこと言うんじゃありません。私だって朝っぱらから、あれ朝っぱらから言いすぎて朝っぱらからが分かんなくなっちゃった朝っぱらからてなあに」

「知るか」

「ゆきさん、醤油取ってくだせえ」

「はあい」


卓上のそれを沖田さんに手渡す。そういやあ今朝は俺らで最後なんですねィ、といいながら大根おろしにお醤油を垂らしている。

私は屯所の徒歩10分のところに住んでいるから、朝ご飯当番になることが多い。早起きは苦手だけれど、日の出も早くなり朝の空気が気持ちよくて、最近はちょっと楽しみだったりしてる。

そんな朝ご飯当番で、もう1つの楽しみは、こうして最後に来た隊士さんと朝ご飯を食べること。

しらじらしく"そういやあ"と言ってたけれど、8割方は沖田さんと食べているのだけど...

少しでも多く仕事をサボる口実なんだろうなあ、土方さんもいるしこれは黙っておこう。
あとが怖い。


「土方さんが最後に食べに来られるなんて、ほんとうお久しぶりですね。何かあったんですか?」

「あァ、ちょっとな」

「土方さんが昨日泣かせ...啼かせた女がちょいと苦情言いにきましてねィ」

「まあ、朝から」

「そこ朝っぱらからじゃねぇのかよ。あと総悟、漢字をわざわざ言い換えるな。誤解招く」

「ゲシュタルト崩壊しちゃったんです」


そうか、と私の返答をさぞどうでもよさそうに流し、先刻の出来事を教えてくれた。


「ったく、その女っつーのは俺が泣かせたんじゃなくてだな。近藤さんを泣かせた女だよ。またキャバクラに行って、護衛だっつってその女の家までついて送ったんだとよ」

「つーかいつものストーカーでさァ」

「それで土方さんがお話を。お疲れ様です...
あぁ、だから近藤さん、食欲無かったんですね。顔アザだらけだったなあ、手当してあげないと」

「いつもすまねぇな、頼むわ」


そうしねぇと1日ヘコんで仕事しねんだわ。テツも碌に書類書けねーし総悟は書類増やすばっかだし...

ぽろぽろとマヨネーズがついた唇から愚痴が溢れてくる。

山積みの書類...始末書の製造者沖田さんは、オゥがんばれようなんていいながら、呑気に鯖と白米を青菜で包んで頬張っている。


「あっ、それ、今日1番してほしかった食べ方!」

「んあ、そうなんですかィ。うめーな、コレ」

「ふふ。また明日も美味しい食べ合わせ考えてるから、寝坊せずに食べに来てくださいね」

「へい、じゃあご馳走様でした〜」

「あっ、食器はカウンターまでお願いね」

「へいへい」


食器を下げずに立ち去ろうとする沖田さんに一声かけておく。一応私が歳上だからか、なんだかんだよくお願いを聞いてくれたり手伝ってくれたりするのだ。

食堂の暖簾を飄々とくぐるのを見届けると同時に、土方さんが煙草で一服し始めた。


「ゆきの言うことは聞くんだな」

「まあ歳上だし、って土方さんや山崎さんも歳上でしたね...異性の強みですかね」

「じゃあ歳上の異性の言うこと聞いてくれるか」

「啼かされるのは嫌ですけど...」

「ドSバカ一緒にすんなよ
....今晩、書類、手伝ってくれ」

「...最近フルーティなカクテルが飲みたいんです」


ちらと睨まれた気がする。口元でプカプカ浮いていた煙が、すぅっと灰皿の方へ降りていった。


「なんちゃって、近ごろ睡眠時間も削っておられるんでしょう、お安い御用ですよ」

「すまねぇな。18時頃から2時間ほど頼む」

「はい、あれ、夕飯19時ですけど...」

「...まだ食堂は空いてんだからいいだろ。
ごちそーさん。美味かった」

「どういたしまして。市中見回りお気をつけて」


沖田さんのバズーカ乱射に。と心の中で付け加えておいた。

最後の人影が暖簾をくぐるのが、片付けスタートの合図だ。


ようし、今日もがんばりますか!
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