ナルト
□06
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「んだよ...定休日か。」
火影室で話題になっていた小料理屋に来てみたものの、暖簾もなく、むなしく定休日の看板が掛けられていた。
ライドウも予定があるとかで断られて、一人でクイッと一杯ひっかけたい気分だったのによ。
手持ち無沙汰な気分を紛らわそうと、千本を上下させる。
「どっか違う店行くか....」
「あら?もしかしていらしてくれたんですか?」
他を当たろうと踵を返した瞬間、両手に大根やゴボウ、キャベツを抱え、背中からはネギを生やした女。
この娘が店主か?顔は悪くないが、なんだろうこの所帯染みた、いや、もはや農家のようだ。
その女は目をぱちくりさせて俺の顔を覗き込む。愛嬌のある顔立ちのせいか、初対面の気がしない。
「あ、あの、もしかしてあなた...」
「ああ、新しい店が出来たと聞いたんで一杯呑もうかと思ったんだが」
「ゲンマ?」
「は?なんで俺の名前ー...」
「わ、忘れちゃったの?!私だよ、よく木登り教えてくれたじゃない」
女の顔をまじまじと見る。
えーと髪を下ろして、化粧を取って、服を脱が...いやいや、ワンピースから着物に着替えさせて、と。ああ、脳内でな。
ぼんやりと、昔の面影が見えてきた。
「...ゆき?」
「あたり!」
「お前!何も言わずに出ていって、今まで何処にいたんだよ!」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてねえよ!相変わらず呑気な奴だな」
「ちょ、ゲンマ、しぃーっ。夜だよ、近所迷惑になっちゃう。」
ついカッとなってしまい、ゆきに宥められる。呑気に"あたり!"とか言ってんじゃねえよ、どんだけ心配したと思ってんだ。
「それにお前、こんな夜まで買い出しか?危ないだろ、その野菜だって里の外の...」
「まあまあ、ゲンマ兄ちゃん、積もる話は中でしましょうよ」
ぐいとゆきが背中を押す。てて、こないだの任務で そこ怪我したんだよ、押すなって。
とは言わず、懐かしい顔にふと笑みを浮かべて店内へ入った。
それにしても、女ってのは歳重ねると判んねーもんだな。