銀魂 攘夷

□誰が人攫いやら
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「ここまでくりゃ追ってこねーかな」



行き着いた先は、小さな浜辺。町外れの林を奥に進んだところにある。たまに水浴びや釣りに来る場所。



「っ、はあ、はあ...」

「...暴れるならさあ、もっと田舎に近い方が良かったんじゃねぇの」

「は、はあ。一度、暴れたんだけど。眠らされてしまって...その後の道は何もない山道で」



女は息も切れ切れに説明を続けた。
路頭に迷うなら山道より街中の方が紛れやすく生きやすいからとここに来て暴れたと言う事だった。度胸があるというかないというか。



「と、とにかく、ふう。ありがとうございました。助けてもらって」



何の疑いもなく礼を述べ、にこにこと笑う。

穏やかな地で育ったのだろうか。こいつ、此処みたいな廃れた土地ではやっていけねえな。また取って食われて終ぇだ。



「お前、逃げたあとはどうするつもりだったんだよ」

「...どうしましょう?」



ぱちくりと目を開いて、小首を傾げる女を阿呆かと小突いてやった。



「どうしましょうって、俺が悪い奴だったらどうするよ」

「でも助けてくれましたし、」

「そう見せておいて、取って食おうとしてたらどうすんだって話。少なくとも俺ァ遊郭帰りだ」



そう、それそれ。ようやく女の顔が強張った。じりと地面を踏みしめる。こんなこともあると知らねぇと、疑いもねぇとここから先田舎にも帰れねえだろう。

怯える姿に少しの楽しさを覚えながら、危機感を持つよう話を進めていく。すると、後ろからまた嫌な声が聞こえて来る。



「助けた女だろ、虐めんなよ」



声の方を向くと高杉が立っていた。
邪魔するなと言うも、高杉は俺を一瞥もせずに話を続ける。



「女、名前は」

「え、はい。ゆきです」

「ああ、ほら!ゆきちゃん今俺油断するなって話してたよな?なんでそーすぐ答えちゃうわけ」

「ああ!やっちゃった...生きてけないかも私」

「てめーもちゃっかり名前呼んでんじゃねえか銀時」



ゆきは砂浜にへたり込む。
その横に高杉が座った。やれやれと、あぐらをかき肘をつく。目線は女の顔をまっすぐ見ていた。

え、なにソレ、カウンセリングでも始めんの。気持ち悪い奴の姿にげんなりする。

せっかく発散しに繰り出してきたのに、それも叶わず、迷子の子猫ちゃんを拾っちまった。


こっからどーすっかな...

ぽっかり丸い夕陽が海に映っている。

海辺の岩に腰掛け、潮騒に耳をすませた。


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