銀魂
□いつもと同じがいい
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その後は土方さんと病室に戻ったが、山崎さんと面と向かって話をするのはやっぱり怖かった。私はベッド脇に腰掛けて、彼と目線を平行にして、それが交わることを避けた。
ベタにもリンゴの皮を剥いで、目線は手元で。
きっと、変だっていうのは気づいてる。
緊張のためか、りんごの味はあまりしなくて。食感ももそもそと心地悪い。果物屋さんで買ったから、おいしいはずなのに。
食べ終わる頃、沖田さんが帰りを切り出した。
「んじゃ、そろそろ帰りやしょう」
大抵、こういうとこは近藤さんの役目だと思っていたのだけど。
他のみんなも同じことを思ったようだ。少しきょとんとしながら、ああそうだな、と立ち上がる。
「ほら、ゆきさんも」
「あの、私は」
「ん」
そう言って手を差し出される。
夕方の眩しい西陽が彼の顔に当たって、少し眩しそうな顔。栗色の髪が一層明るく見える。
ぼうっとした意識で吸い込まれるように手を取ろうとした時、
「まだ帰んないで、ゆきちゃん」
私の手を、山崎さんの手が掴んだ。
驚いて振り返ると珍しく真剣な顔で。
沖田さんがヤマザキ、と何のつもりだと言うように名前を呼ぶ。それでも彼の手はびくともせずに、寧ろ掴む力が強くなった。
少ししてから近藤さんが言った。
「...総悟、行くぞ。ゆきちゃん、俺らは仕事に戻る。帰れるよな?」
「えっと、お財布もあるし、バスで、」
「なら大丈夫だな」
近藤さんが言ったなら仕方あるまい、沖田さんも含め、3人は帰路についた。