銀魂
□ココロエチガイ
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「事後報告ですみません」
昼休み。仕事が一息ついたので副長に年休簿を提出しに来ている。テツくんに代わってもらった1時間分。実質は15分ほどだけど。
「いや、それはいいんだが...休みの無駄遣いだろ。緊急事態だったんだ、取らなくてもいいぞ」
「私情ですから。こうでもしないと休みも消化できないので...」
「そう言われりゃそうだがな。」
はい、と判をついた帳簿を差し出してくれた。受け取りながら、今朝のことを切り出してみる。
「銀さん、土方さんのところにも乗り込んじゃったんですよね。すみませんでした」
「お前が謝ることはないだろ。掃除のついでに障子も張り替えてくれてんだ。文句ねぇよ」
「ふふ、ありがとうございます。...ちなみに、なんで銀さん怒ってたか分かります?」
動きがぴたりと止まって、知らないのか?と目で問われる。
私も、知らない、と目で返事をする。すると土方さんは、少しふぅとため息をついて話してくれた。
「まるっきり、野郎の勘違いだと思うがな。俺にも話の筋はよく見えないが、まあ、そのなんつうか...」
少し気まずそうに目を逸らされる。頭をガシガシと掻く姿を見て、これ以上聞くのは野暮な気がした。
「ま、まあ何でもいいや、もう怒ってないみたなの「夜のお相手っつったらアッチの事でしかないでしょう」
いつのまにか沖田さんも副長室の前に来ていた。なんとも呆れた目をしているが、どうやら理由を教えてくれるみたい。
「アッチ。」
「アイウエ」
「オ!」
「そうきやすか。...アッチ、イッチ」
「ウッチ、エッ、あっ、あぁ、なるほど」
「チッ、気づきやしたか。いや、馬鹿ですかアンタ。なんで気づかねーんですか」
「そ、そんなこと言われましても...」
間接的に教えてくれたことに少し感謝。私たちのやり取りを聞いていたのかな。
「それにしても銀さん、沖田さんと私がそんなことになると本気で思ったのかな。困ったもんだねえ」
「...どうだか」
ぶすっとした顔で部屋に入って胡座をかく沖田さん。土方さんは畳ズレの音を聞き、書類から目を離さず声をかけた。
「...総悟何か用か?普段ならぶらついてる時間だろ」
「へーへーお邪魔でしたかィ」
沖田さんは私と土方さんを一瞥し、胡座をかいた足元に視線を落とした。音のない大きな一呼吸は、土方さんに何やら伝えたいことをかかえているのだろう。
「...そろそろ休憩も終わるし戻ります。お二人とも、今日はいろいろすみませんでした」
「どーも」
「おう。午後も頼む」
ぱた、と障子を閉めて食堂へ向かう。
柔らかく吹いた風は肌に心地よく、朝の喧騒を鎮めてくれた。
「こういう空気は読めるのに」
「...体張った割には完敗だな、総悟」
「...」
心が折れない限り負けたことにはならないんでしたよねィ...そう呟いていつものを取り出す。
数秒後、心地よい風が爆風に変わったのは、言うまでもない。