幻影の魔女

□Tales of the abyss
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『久しぶりだな。アスター殿』

「ヒヒヒッ、お久しぶりですな。ユヅキさん」


今日は、ケセドニアの代表・アスターと会談。

相変わらず特徴的な笑い方だな。



アスターとの会談内容は、グランシャリオンで取り入れている上下水道をケセドニアにも、という話だった。

確かに、ケセドニアは衛生面が整っているとは言い難い。
これはオールドラント全体に言えるが……

それは置いといて、会談はそれを中心に進み、終了した。

上下水道の計画は前向きに検討していくという事で纏まった。




そして、グランシャリオン内にあるギルド本部の執務室に戻った私はソファーに横になった。

今日すべき仕事を終えた達成感に浸っていると、扉をノックする音が聞こえた。

横になっていたが、起きて座り、返事をする。



「失礼します」

『アリエッタか』

「はい。お久しぶりです姉様」


アリエッタは、ゲームでは魔物に育てられるキャラだったが、この世界では私が拾って育てた為、ゲームより流暢に話す。
私の事は"姉様"と呼び、慕ってくれている。

『何か用か?』

「はい。イオンから手紙預かってきました」

鞄から封筒を取り出し、私へ差し出した。

『ご苦労』

「はい、アリエッタはこれで失礼します」

『おや、もう帰るのか』

「はい、一応任務として来たので。
来週また来ます」

『そうか、分かった。イオン達に宜しくな』

「はい」

ペコリと頭を下げて、部屋を出ていくアリエッタを見送った後、ペーパーナイフで封を切り、手紙を読む。

8割近くが、ヴァンや大詠師の愚痴だな。



…………ん?



ティア・グランツ?



あぁ、ヴァンの実妹か。

アレが入隊する時期になったか。

ジゼルが同僚に愚痴っていたらしい。
髭(=ヴァン)に頼まれて、わざわざユリアシティまで足を運んだにも関わらず、サボるわ、真面目に話を聞かないわ云々でやってられるか!とやけ酒していたとさ。

ジゼルとは、知っているかもしれないが、原作では"魔弾のリグレット"と呼ばれていた女だ。

弟であるマルセルをシャルルリッジが助け、それに恩を感じて姉弟揃ってギルドに入った。

普段は六神将と共にこちら側のスパイとして頑張ってくれている。

ん?六神将全員がスパイだと変か?

レプリカルークが造られた2年後に、ジゼルを除いた六神将を懐柔…ゴニョゴニョ、説得したのだ。

まぁ、シンクとアリエッタ、ジゼルは神託の盾騎士団に入隊する前からこっち側だったが。

今や、レプリカ計画を実行しようと必死なのはヴァンただ一人。
プップー。愉快愉快。

あんな現実味のない妄想を実現させようなんて、そもそも無理な話だ。

レプリカを造るのに必要な第七音素(セブンフォニム)は、ローレライが源となっている。
ローレライを消した場合、芋づる式にレプリカ達も消える可能性が大。
これはディストの研究で、分かった事だ。

結果、ヴァンの計画は初っぱなから破綻しているというわけだ。

六神将の中でも、ラルゴは特に衝撃を受けていた。
ヴァンの計画は所詮、机上の空論、夢のまた夢の話と理解して茫然としてな。
しかーし。
それで、終わらないのが私だ。
キムラスカ王女として、国一番の教育を受けた筈のラルゴの実娘がいかに愚かなのかを聞かせ、またはこっそりキムラスカへ入れ、とある町で突撃視察に来た所を(先触れも何も無かった為、町の人々が出迎えに来ないのに対して不満を洩らすところ)見せて娘に抱いていたであろう綺麗なイメージを粉々にした。
その後、一週間程海で黄昏るラルゴが目撃されたとか何とか。



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