story
□体温(未完)
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その日は朝からひどい雨が降ってたから、
オレは濡れるのが嫌で家に居たんだ。
せっかくの休みの日だったけど特にすることもなかったし、ちょうどいいと思って先生を待ってた。
任務がある日は夜に、任務がない日は昼間から。
最近オレとカカシ先生は任務以外の時間をほとんど一緒に過ごしてる。
でもこんな雨の日だから、来ないかな。
窓に打ち付ける雫が爆音みたいにうるさかったけど、そこまで気にならなかったのはきっと、雨が優しいからだ。
部屋で一人で、何の音もない静かな部屋で一人なのは可哀想って、歌ってくれてるんだってばよ。きっと。
まあ確かに、ちょっと寂しいけど、、。
こないって分かってんなら諦められるから、そんなにつらくはないってば。
厚いガラスの向こうは水滴で、オレから見える世界も丸いレンズに通したみたいに変な形。
指で触ってみたら、思ったより冷たくてちょっとびっくりした。
離してみたら指の形と同じようにに丸く結露が無くなってて、今度は手のひらをそっと、当ててみる。
じんわり伝わってくる温度が少しずつ手首を冷やしてく。
冷たい。
カカシ先生、今どこにいんのかな。
雨で濡れてないかな、大丈夫かな。
雨の音聞いても、水滴の向こう見ても、ガラスがどんなに冷たくても、頭に浮かぶのはカカシ先生のこと。
いつの間にかこんなに
愛してたんだ
「会いたいなぁ...」
瞼を閉じかけたら、こつ、って変な音。
手のひらがあったかくて、ついに麻痺したかと思ってガラスを見たら、
見慣れた銀色があって。
「カカシ先生...?」
色違いの優しい瞳が控え目にこっちを見てる。
ガラスの向こうで手のひらを、オレの手のひらに重ねて、「何やってんの?」
って口パクパクしてる。
「...な、何してんだってばよっ!?」
いそいで窓開けたらものすごい風と雨の音で、何も聞こえなくて。
先生はこんな雨の中歩いてきたのかってほんと、びっくりした。
「オレはあのままじっとしてても平気だったけどね」
カカシ先生は濡れた手のひらを見つめながら部屋に入ってきた。
「な、何のんきなこと言ってんだってばよカカシ先生。風邪引くだろ。」
「へぇ優しいね。」
マスクで隠れた口元を明らかににやつかせながら、カカシ先生はいじらしく笑った。
オレが持ってきたバスタオルで体を拭きながら、窓の外を見てる。
「どこも行かないの?今日。」
「あぶねえってば。」
「子供は風の子って言うデショ。」
流石にオレだってそんな子供じゃないってそっぽ向いたら、あははって笑っておっきい手で頭をガシガシされた。