□夜祭
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神社内に着くと、たくさんの屋台が並んでいる。
簪屋に飴屋に面屋。
それにこの人出。
日野中の人間が集まっているんじゃないかと思うくらいの人集り。
「ソージ、俺から離れるんじゃねえぞ……………って、もういねえしっ!!!」
どこだ、どこだ、どこだ?!
人攫いに連れて行かれたらどうするんだ?!
それじゃなくても、あのナリだ。
置屋に売り飛ばされても仕方がない。
男とばれた所で陰間茶屋に再度売られてしまうだろう。
ああ、それならまだ見つけられるからいい。
1番厄介なのは、お稚児さん趣味の大名に売り飛ばされる事だ。
そうなったら、見つけ出すのは不可能だ。
宗次郎の容姿を見たら、大金を出して名乗り出る大名はいくらでもいるだろう。
早く見つけないと本当にヤバい事になる。
祭りの夜は子供を狙った人攫いが多いいんだ。
団子屋の前にもいない。
酒屋の前にはいるはずがない。
面屋はもう探した。
飴屋にもいない。
ああ、一体どこへ行っちまったんだ!!
神社の本殿へ続く階段に登って探してみる。
土方の腰辺りまでしかない宗次郎の背丈では、この人集りから見つける事なんて到底出来ない。
「くそ…っ」
宗次郎ははぐれて泣いているかもしれない。
土方はまた人ゴミへ引き返した。

やっと見つけた小さな体は金魚すくいの金魚に夢中になっていた。
「土方さん!見てください、金魚すごく可愛い♡」
なんて呑気な。
「………お前、俺がどんだけ探して心配したと思ってんだっ!!!」
突然怒鳴られて、身を竦ませる。
そして、零れ落ちんばかりの大きなまなこがみるみる内に涙で潤う。
「泣くな!!!」
「はい…っ」
これ以上涙が溢れないように必死で堪えている。
はぁーっと溜め息を吐いて、宗次郎の手を引いた。
「わりぃが、金魚を買ってやれる金はない。飴で我慢してくれ」
金魚は金持ちしか買えない高値の生き物だ。
宗次郎は小さく頷いた。
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