□kiss
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蕎麦を存分に堪能した二人は、沖田お勧めの甘味屋を目指した。
甘味屋の暖簾をくぐると、もうすっかり顔馴染みになってしまった女将が「沖田さん、いらっしゃい」と笑顔で声をかけてくれた。
ぜんざい二つと安倍川餅とみたらし団子を頼んだ。
間もなく運ばれてきたたくさんの甘味に沖田が目を輝かす。
「オッキーは甘いモノが好きながかえ」
「だあいすきです!!!」
花が溢れんばかりの笑顔で答えた。
ぜんざいを啜り、安倍川餅を口に放り込む。
きな粉と砂糖がいい配分に合わさり、口内ですぅっと溶けていく。
やっぱりここの甘味はいつでも美味しい。
「そんな細い体によう入るもんやのう。まあ、腕っ節が強いのはよう知っちょるけんど」
ぜんざいの餅を食べながら、沖田の体を見る。
色白で線の細い華奢な体だ。
それに女の様に整った愛らしい顔立ちと朗らかで明るい性格。
その裏は新選組一の天才剣士、沖田総司。
その剣技は天女の舞の如く美しく残酷だ。
自分も何度殺されかけたかわからない。
そんな沖田は「甘いモノは別腹でーす」なんて言いながら、パクパクと目の前の甘味を平らげていく。
まあ、そんなオッキーが好きながやけんど。
坂本はずずっとぜんざいを啜った。

甘味屋を出た二人は、坂本に連れられて小間物屋に入った。
そして、お揃いで黄緑色に染められた手拭いを買った。

外に出た頃にはもう空が赤く染まり、カラスが鳴いている。
「龍馬さん、スカウトというのは上手くいってますか?」
「おう、順調ぜよ。もちろんオッキーも絶賛スカウト中やき、土方に飽きたらわしの所へ来るとえい。隊服は新選組よりかっこえいぜよ」
「土方さんに飽きたら、かぁ。じゃあ、その時は龍馬さんに頼っちゃおうかな」
「いつでも待っちゅうき」
ふふっと沖田が笑い、坂本もハハハと笑った。
「さてと、私はそろそろ屯所に戻らないと」
「もう帰るが?これから出会い茶屋に連れ込もうと思ってたがやけど」
「妙な事を言わないでください」
頬を赤らめ、困った様な顔の沖田に坂本が吹き出した。
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