□kiss
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「りょ、龍馬さんっ?!」
「えいから、えいから。今日はわしがおごっちゃる」
有無を言わさないかのように、大きな手でギュッと握られた。
離してくれそうもないので、仕方なくついて行く事にした。
「所で、でえとって何ですか?」
沖田には、坂本が時折使う聞き慣れない外来語がわからない。
「デートちゅうんは、オッキーみたいに愛らしいおなごと仲睦まじく手を繋いで町を歩く事を言うがよ」
「私、おなごじゃないですー」
「似たようなもんやき、気にしなや」
と、ガハハと笑った。
「しかし、隊服姿のオッキーも凛々しくてえいけんど、髪を下ろした着物姿のオッキーもなかなか色気があってえいのう。げにまっことおなごのようや」
「そうですか?」
「新選組が誇る特攻隊長とは思えんき」
またガハハと笑った。

「オッキーは腹は減っちょらんか?」
「そういえば少し」
「美味い蕎麦屋があるけんど、行くかえ」
「やったあ、お蕎麦大好きでーす」
沖田が嬉しそうに笑い、喜んだ。
それを見た坂本も笑った。

連れて行かれた蕎麦屋は、蕎麦通の斎藤がお勧めしてくれた蕎麦屋だった。
斎藤が勧めるくらいなのだから、相当美味いのだろう。
「お待たせしました」と、蕎麦が二つ運ばれてきた。
鰹だしのいい匂いがする。
二人は「頂きます」と、手を合わせて食べ始めた。
江戸で食べていた濃い蕎麦つゆではなく、上方特有の上品な薄味だ。
「美味しい!さすが一さんもお勧めするお蕎麦ですね!」
「一?……三番隊隊長の斎藤かえ?」
「ええ、一さんは蕎麦通なんですよ」
「ほうか、ほうか」
自分の舌に狂いはなかったと、満足そうな笑みを浮かべた。
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